古本の書き込みから-4
僕とキョウ子がショッピングセンターを出たときには、太陽が低くなっていた。
僕は、勢いで大変なことしたな……と思いながら、二人で公園を抜けようとしてると、キョウ子はカバンから何かを出して、少し奥まった遊具の陰に行くと、そこの地面に敷かれたコンクリートに、
せっくす
青 春 の 扉
と書いた。ふりがなの字は赤かった。
「こら……」僕はキョウ子をつついた。「そんな落書きするなよ。」
「ふふっ、」キョウ子はお構い無し、といった感じだった。「石鹸のクレヨンだから、ほっといてもすぐ消えるよ。」
「きみねぇ……」と言う僕の頬をつねりながらキョウ子は言った。
「これが消えるまでに何人かの目に止まって、その人たちの『せっくすのとびら』をたたくことになるかも知れないでしょ。」
「そんなの、キョウ子くらいじゃないのか?」と僕は言いながらその『青春の扉』の落書きを見ると、あのキョウ子が耳もとでささやいた
「せっくすの……と・び・ら」の声がよみがえってきた。
「ブンイチ……また固くなってきたの?」
キョウ子は僕のようすに気づいた。
「こんどは、……痛くてもいいから……奥まで入れてよ……。」
【おしまい】