有希と健一 -アパートの一室で-(2021/05/01)-7
そらから小一時間が経った頃。
「有希さん・・・、
あの・・・・、
僕・・・・またしたくなっちゃた。」
健一が気まずそうに有希に話しかけてきた。
「え?
また?
さっきしたのに?」
有希は悪気なく聞き返した。
「あ、ご、ごめんなさい。
やっぱり、僕、やめとく。」
健一が慌てて訂正する。
「あっ。
健一くん、違うの。」
今度は有希が慌てた。
「健一くん、
私、別に責めてるわけじゃないの。
ただ、純粋にね、
もう?って思っただけ。」
「そう・・・なの?」
健一が怪訝そうに尋ねた。
「そうよ、ホント。
さっきしたばかりだから、びっくりしちゃったの。
もうしたくなっちゃったの?って」
有希は笑顔で話しかける。
「あ、いや、その・・・。」
健一の頬が赤くなる。
「いいのよ、健一くん。
気にしないで。
私はまたコンビニへ・・・・。」
と有希は言いかけて、
雨が降りそうな雲行きだったことを思い出した。
「あ、健一くん・・・、
あのね、
実はね、さっき、雨が降ってきそうだったの・・・。
それでね・・・、
んー・・・、
悪いんだけど・・・、
私、ここにいちゃ・・・・ダメかしら?」
有希は内心ドキドキしながら聞いてみた。
「え?
そ、それは・・・。」
健一が戸惑いを見せる。
「私は机で正面を向いて仕事してるから。
ヘッドホンをして音楽流しとくし、
絶対に、健一くんの方は見ないから。」
「で、でも・・・。」
「どうしてもイヤなら、
仕方ないけど・・・。」
有希はわざと物凄く残念そうな表情を作って健一を見た。
「・・・そっか、分かった。
毎回有希さんに外に出てもらうの悪いし、
雨になったらもっと悪いし・・・、
僕、有希さんがいても大丈夫。」
健一は笑顔で答えた。
* * *