コンクリートの階段を踏んで-1
私はc学二年生。
私はs学三年生からc学一年生まで、団地で過ごした。
鉄道の高架化工事で、住んでたお家をしばらく立ちのくことになったんだ。
ママやパパが私の教育環境を変えたくない、ってことで同じ校区内の団地に住むことになったんだけど、ほんの数年の仮住まいってことで、家にあったもののほとんどはトランクルームに置いた『最小限の暮らし』をすることになった。
▽
私たちが住む棟は『キューブタイプ』なんて呼ばれてた。
角材を短く切ったような、ひと棟が10室、一つの階にふたつの家がある五階建てで、私たちは3階に住んでた。
私は五年生だった。
一学期の暑くなってきたころ、体操服で学校から帰ってきた私は「下のポスト」をのぞいてから階段をのぼりはじめた。
2階に来た時、私はお尻を軽く叩かれた。
(えっ?)私がふりむこうとすると、今度はお尻を指先でつついて、
「上がるの、さっさと上がるの!」と男のひとの声がした。
私はびっくりして急いだ。そして私が家の前で立ちどまると男のひとは、
「上がって、上がって!」とカンチョーみたいにお尻の穴をつついて、怒鳴るように言った。
私は追われるように階段をのぼっていった。
とうとう一番うえの5階にやってきた。
少し天井が高くて正面の壁に、屋上へいくための短いハシゴがあるのが見える。
ここに住んでいるのに、5階に来たのは初めてだった。
男のひとは、まだ私のお尻をつついて5階の右側のドアの前に私を連れてきた。
ハシゴのある壁、ドアのある壁、そしてパネルの立てられた壁。三方が囲まれた昼なのに薄暗い空間に、追いつめられたのをはっきり感じた。
私は気づいた。
新しいお家のことばかり考えてる私には、この団地のことに関心なかったけど、5階には誰も住んでいないんだ。
男のひとはズルッと私の体操パンツをひきずり下ろした。
「ゴメンな……」男のひとは私のお尻をなで回した。「ずいぶんツンツンして、痛かっただろ?」指先がねっとりとお尻の肌をさぐる。
私はドアの方をジッと見つめて立っていた。すると、
パチッ! ジーッ…… パチッ! ジーッ……
ドアが何度も青白く光った。その光と音に覚えがあった。
(インスタントカメラで撮ったんだ……)
私はお尻が冷たくなった。(えっ?)