喪服を着た義妹-1
1. 義父の通夜
菩提寺の住職の読む物憂げな経が、居間に詰め掛けた弔問客の頭上を流れていく。 棺を正面に、右側には亡くなった清一郎の子供たちと親族が、神妙に正座をしている。長女の静子を妻にした健志も、その列に加わっていた。
足の痺れがウズウズと始まって、足首を組み替えた。股間の疼きも、高まってきた。
右横に並んだ義妹、和子のの喪服の襟元につい視線が向いてしまう。喪服を着た女は男心をくすぐる。健志の視線の先には和子の抜けるように白い肌が、襟の割れ目に溢れている。乳房に押されてむっちりと膨らんだ胸元が、さらに下へと健志の妄想を掻き立てる。
妻の静子は長年の喫煙が祟って、末期の肺がんで今はホスピスの緩和ケアを受けている。治療の見込みはなく、モルヒネでかろうじて痛みを抑えているのだ。
夫婦の営みも途絶えたままだ。股間の疼きが、足の痺れを幾分か忘れさせてくれる。
和子の白い肌が、乳房から小腹に繋がり、太腿の合わせ目からはみ出す漆黒の陰毛に隠れた蜜ツボへと、連想が続く。膨れ上がった男根は、正座の股ぐらとズボンに押しひしがれて、痛みが増してきた。
読経がすみ、別室に用意されたお清めの膳に移った弔問客がまばらになると、身内の者も「また明日ね」といって帰っていった。葬儀は、明日正午過ぎに予定されている。
長男の隆は、喪主としての挨拶はしたが、実質的な取り仕切りは、実家に一人残って両親の世話をして来た和子に任されたようだ。和子は気が利いて、やることが早い。健志の母が死んだときも、いち早く駆けつけて、通夜から葬儀まで抜け目なく取り仕切ってくれた。
線香の匂いが漂うがらんとした居間に、健志と和子が残った。
「お義兄さん、後は明日片付けますから、どうぞお帰りになってください。お仕事があるんでしょう」
「俺は大丈夫だ、事件がなけりゃ暇なんだよ、それより和子ちゃん、疲れたろう、おとうさんの世話からずっと働きっぱなしで・・・お灯明は俺が守るから休んでよ」
「本当にいいの?正直、もうフラフラ・・・」
健志は祭壇の前に座布団を並べて、横になった。
「俺はここで一晩張り込みだ。慣れたもんだよ」
「助かるわ、じゃお言葉に甘えます、何かあったら、起こしてください」
和子は健志に疲れた微笑みを残して、寝室に引き上げた。