光の風 〈聖地篇〉-1
御剣。遥か昔、太古の世界で神々が一つの国で過ごしていた。
太古の国の名はオフカルス。
オフカルスで神としての力を持つ、その末裔こそが御剣である。
カルサとリュナは、御剣の総本山に来ていた。一連の「皇子カルサ」をめぐる事件。
それに関わる情報を得るため、現状を知るためにカルサはリュナを連れて訪れた。
総本山にある宮殿。そこに世界中にちらばる御剣たちをまとめる人物、守麗王(しゅれいおう)がいる。
案内役をかってでた守麗王の側近・沙更陣(さざらじん)の後に続き宮殿内を進んでいく。
庭にも緑が豊富で、常に水が側に流れるような造りになっていた。
「きれい。」
感動の声がリュナから何度となく漏れる。笑顔のリュナを見てカルサは微笑んだ。しかし彼の目は景色など素通りしている。
「気に入ったかい?リュナ。」
「はい!」
沙更陣の問いかけにリュナは元気よく答えた。優しい表情で沙更陣は頷く。そしてその横のカルサに目をやった。
「カルサはどうかな?」
「とても素晴らしい庭ですね。水の音が心地好いです。」
予想外の質問にカルサは当たり前のように対応した。その笑顔、言葉は国王陛下としての外遊仕様そのもの。威厳、威圧さえ消してはいるものの、立ち振る舞いは人の上に位置する者としての雰囲気がにじみ出ている。
「懐かしい感じがする?」
「そうですね、まさに御剣の帰る場所という感じがします。暖かい。」
沙更陣は微笑み、よかったと言い足を進めた。リュナは笑顔でカルサを見つめる。カルサがそれに気付くと、幸せそうに笑った。
その笑顔を見ているだけで幸せな気持ちになれた。
「この扉の向こうが謁見の間、そこに王がいる。」
しばらく歩いたあと、沙更陣は大きな扉の前で立ち止まった。ゆっくりと開ける。
中には髪の長い女性が立っていた。ゆるくウェーブがかかり、燐とした姿勢は気高い雰囲気を感じさせる。
彼女はまっすぐにカルサたちを見た。三人はゆっくりと中に入り歩み寄る。
「雷神カルサ・トルナス、風神リュナ・ウィルサ。」
確かめるように刻んだ声は耳に心地好い音だった。しかし声にさえ、気高さと力を感じる。
名前を呼ばれた二人は返事をすることもなく、目の前にいる女性をただ見ていた。
「カルサ、リュナ。この方が守麗王だ。」
沙更陣が守麗王の前につき、紹介をする。リュナは驚いたが、高貴なオーラを放つ守麗王に見とれていた。