光の風 〈聖地篇〉-6
千羅は笑い、拳を真っすぐカルサに向けた。
「病んだら風神に慰めてもらいな!ジンロの下へ戻るぞ、雷神。」
「ああ。」
ドォン!
二人が歩きだした瞬間、爆発音が辺りに響いた。一気に緊張が走る。
カルサ達は少し身をかがめ様子をうかがった。二人とも一歩も動かずに黙っていた。
カルサはラファルの様子を伺う。そして体をお越し、ため息を吐いた。
「心配はいらないようだな。千羅。」
「だな。」
ラファルが少しも警戒をしていない。爆発音が響いたわりに、鳥達が穏やかだった。
何か敵襲ではなく自発的に行なった音なのだろう。しかし何の為に、何を?
人の気配がし、二人はその方向に目を向けた。だいたいの予想は付いていたが、まさにその人だった。
「あれはセレモニーの開始が近いことを知らせる合図だ。お前達のな。」
ジンロは近付きながら話す。その答えにカルサは呆れながら笑った。
「嬉しい事だな。ところでジンロ、ここには何の影響もないのか?」
「ああ、まだな。」
でもそう遠くない。ジンロはそれを目で訴えた。カルサも千羅もそれを感じ、気持ちが引き締まる。
「瑛琳はどうした?」
「シードゥルサの警備をしています。」
そうか、と呟いた後、ジンロは厳しい表情で二人を見る。
「油断はするな。どこから来るかは分からない。本当に来るのか、それとも罠か。」
その言葉に緊張が走る。カルサは最近の一連の事件を思い出していた。黒の竜王フェスラ、これが太古の因縁の幕開けであることは明白だ。
「という事は…オレの周りだけ事が起きている、そういう訳だな。」
それが何を意味しているのかは分からない。何をしようとしているのかも。
「皇子の行動理由は、彼らは知らないはずでは?」
「その筈だが…確実とは言えない。何故カルサに…?」
カルサは答えの出ない考えに入る。何故自分が先に?どうして?
カルサは右手で左腕をつかみ、体を縮める様にした。出ないはずの答え、何故かここなら分かるような気がした。