光の風 〈聖地篇〉-14
「何がこんなに貴方を縛り付けてるの。」
何もできないもどかしさからリュナの声に力が入る。力になりたい、守りたい、その想いが体温を通して伝わってくる。
何も知らないと思っているでしょ。
あの時この言葉を言ったリュナの表情、気持ちが脳裏に過る。時期なのかもしれない。
いや、時期ではない。自分の勇気なのだとカルサは認めた。
「御剣の始まり。それは太古の神々から始まる。」
カルサの声に反応し、リュナは勢い良く体を起こした。カルサは目を閉じたまま言葉だけを発していた。
「知ってるだろ?」
目を開けリュナを見る。いつもと変わらない笑顔。リュナは頷き、知っていると答えた。その答えに対し微笑んだ後、次第に笑みが消えていった。
「でもそれは偽りの話。太古の国オフカルスに神なんて存在しなかった。いたのは神官と呼ばれる特殊な力を持つ者だけ。」
カルサはゆっくりと体を起こす。リュナに目を合わす事無く、記憶と共に遠くを見ていた。
「先日リュナの夢の中に現れた人物。彼の名は黒の竜王フェスラ、太古の神官の一人。」
リュナの中にあの時の感覚がよみがえる。あまりにも強い闇の中。恐怖のあまり思わず身を縮めた。
「彼は太古に起きた事件…事故により亜空間に閉じ込められていた。それが何故リュナと繋がったかは分からないが、彼は時空を越え現れた。」
そしてカルサはリュナを見た。彼女は真剣に話を聞いている。黙ったまま次の言葉を待つ。
「同じ様に亜空間に閉じ込められた者がいた。オレの使命は彼を倒す事。」
倒す。その言葉にリュナは固まった。カルサの目はまっすぐリュナの目を捕えていた。
少しの沈黙。それでもリュナはカルサの次の言葉を待っていた。彼の言葉を聞かなければ。
「この太古からの因縁を果たす為オレはここにいる。以前魔物が入り込んだのは手ほどきをした者がいるから。奴らの狙いはおそらくオレだろう。」
どこで聞き付けたのかは分からない。カルサは目を伏せ、考えてみた。
また沈黙が生まれる。リュナはカルサを見つめ待った。閉じられたままの瞳は開く気配がない。
「千羅はそういう意味でのオレの仲間で、瑛琳も同じ。彼らは時にオレを皇子と呼ぶ…ナルの部屋でも言っていただろ?」
リュナの記憶がよみがえる。確かにあの時気になった言葉があった。
《皇子としての貴方を知る者》
比較的、皇子としての期間が短かったカルサにとって、皇子である彼はまだ幼い時代だった。
そんな彼を知っていても何がどうあるわけではない。リュナの中の疑問符が確実に増えていった。