投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

光の風の最初へ 光の風 58 光の風 60 光の風の最後へ

光の風 〈聖地篇〉-14

「何がこんなに貴方を縛り付けてるの。」

何もできないもどかしさからリュナの声に力が入る。力になりたい、守りたい、その想いが体温を通して伝わってくる。

何も知らないと思っているでしょ。

あの時この言葉を言ったリュナの表情、気持ちが脳裏に過る。時期なのかもしれない。

いや、時期ではない。自分の勇気なのだとカルサは認めた。

「御剣の始まり。それは太古の神々から始まる。」

カルサの声に反応し、リュナは勢い良く体を起こした。カルサは目を閉じたまま言葉だけを発していた。

「知ってるだろ?」

目を開けリュナを見る。いつもと変わらない笑顔。リュナは頷き、知っていると答えた。その答えに対し微笑んだ後、次第に笑みが消えていった。

「でもそれは偽りの話。太古の国オフカルスに神なんて存在しなかった。いたのは神官と呼ばれる特殊な力を持つ者だけ。」

カルサはゆっくりと体を起こす。リュナに目を合わす事無く、記憶と共に遠くを見ていた。

「先日リュナの夢の中に現れた人物。彼の名は黒の竜王フェスラ、太古の神官の一人。」

リュナの中にあの時の感覚がよみがえる。あまりにも強い闇の中。恐怖のあまり思わず身を縮めた。

「彼は太古に起きた事件…事故により亜空間に閉じ込められていた。それが何故リュナと繋がったかは分からないが、彼は時空を越え現れた。」

そしてカルサはリュナを見た。彼女は真剣に話を聞いている。黙ったまま次の言葉を待つ。

「同じ様に亜空間に閉じ込められた者がいた。オレの使命は彼を倒す事。」

倒す。その言葉にリュナは固まった。カルサの目はまっすぐリュナの目を捕えていた。

少しの沈黙。それでもリュナはカルサの次の言葉を待っていた。彼の言葉を聞かなければ。

「この太古からの因縁を果たす為オレはここにいる。以前魔物が入り込んだのは手ほどきをした者がいるから。奴らの狙いはおそらくオレだろう。」

どこで聞き付けたのかは分からない。カルサは目を伏せ、考えてみた。

また沈黙が生まれる。リュナはカルサを見つめ待った。閉じられたままの瞳は開く気配がない。

「千羅はそういう意味でのオレの仲間で、瑛琳も同じ。彼らは時にオレを皇子と呼ぶ…ナルの部屋でも言っていただろ?」

リュナの記憶がよみがえる。確かにあの時気になった言葉があった。

《皇子としての貴方を知る者》

比較的、皇子としての期間が短かったカルサにとって、皇子である彼はまだ幼い時代だった。

そんな彼を知っていても何がどうあるわけではない。リュナの中の疑問符が確実に増えていった。


光の風の最初へ 光の風 58 光の風 60 光の風の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前