ユウコの選択 ケンイチの明るい未来-1
翌日、さっそくSDカードの中身を見てみようとしたが、意外にも遅くまで事務所を出入りする者が多かった。
「あれ?ヨシダさん残業?」
「あ、いや……」
「やることないなら早く帰って。出退勤ログと申請時間が合わないといろいろ言われるんだよ」
事務所での作業はあきらめざるを得なかった。
家に帰っても、ユウコはいつもと同じようにふるまっていた。
しかしケンイチには、何か始終自分の言動をうかがっているように思えてならなかった。
結婚後長い間、タナカとは最後の一線を超えていなかった。
しかし一度手で射精させてしまった後は、強引なタナカに押されてあっという間にタナカの巨大な性器に征服されてしまった。
そんな後ろめたさがあるのではないか。
ケンイチは愛妻がタナカの性器に縋りついて何度も精液を飲み、尻を抱えられるのは我慢ならなかった。
しかしそのことを思い返すたびに性器は大きく勃起し、どうにもならないくらい興奮するのである。
もうタナカとは会わないでほしいと思いながら、早くSDカードの中身を見て見たいと考え、またそのうち自分に隠れて性交するのであれば、その様子も覗いてみたいと強く願っていた。
ユウコは生理で性交ができないし、SDカードは見られない。毎日イライラしていたが、ふとネットカフェの存在を思い出した。USBのカードリーダーを使えばいいのだ。
「ね…..今日はいつも通り?」
「いや、えーっと。かなり遅くなるはず。」
ケンイチは出がけのユウコの問いかけに上の空で答え、仕事も適当に終えると、退社のチャイムと同時に会社を出て、ネットカフェに飛び込んだ。
ケンイチはSDカードを回収して10日もたってやっとその中身を見ることができたのだ。
予想以上に明瞭な画面では、タナカの巨大な男根や、そこからユウコの口の中に射精された大量の精液がはっきりと確認できた。
「愛してます……タナカさんの大きくてカチカチのおチンポを愛してます……」
そうユウコが言わされているところを何度も繰り返し見ては、涙を浮かべながら何度もティッシュに射精をした。
散々射精をして日家に帰ると、明かりが消えていた。
終電間際までネットカフェから出られなかったので、当然かもしれない。
玄関に入ったケンイチは違和感を覚えた。
『何だろう?』
そう思いながら部屋に入った。いつもと同じようだが、何かが足りない気がする。
胸の鼓動が高まり、不吉な予感とともに寝室に入ると、ベッドは空だった。
慌てて狭い部屋の中を探したが、どこにもユウコはいなかった。
いつも靴箱にあったユウコの靴や、普段使っている化粧品などが消えており、旅行用のキャスター付きバッグも消えていた。
足の力が抜けたケンイチはリビングの真ん中に座り込んだ。
行き先はわかっている。タナカのところだ。
恐れていたように、本当にタナカにユウコを盗られてしまった。
床に頭をつけ、あふれてくる涙をこらえきれず、ケンイチはいつまでも泣き続けた。
翌朝、一睡もせずケンイチは人事部長との面談を取り付けた。
「どうしたの?ヨシダさん。顔真っ青だし目が血走ってるよ」
中年の太った人事部長はいつものようににこやかにそういった。
「タナカが……タナカが…..ユウコを連れて行って、盗んで……」
「何だって?ユウコさん?誰?」
行きつ戻りつするケンイチのわかりにくい説明を、人事部長は辛抱強く聞いた。
「し、し、証拠もあります。このSDカードに……二人が……タナカが……」
人事部長は無表情になると、手を上げて、ケンイチを制した。
「ヨシダさん。奥さんがタナカ君のところにいるっていう証拠はあるの?
それに奥さんだって子供じゃないんだから、それはあなたがタナカ君と話すことじゃない?」
「え?…..」
「民事だからさ、会社が口出しする事じゃないね。間に人を入れるべきじゃないかな。弁護士とか。」
「べ……弁護士?」
「話それだけ?俺結構忙しいんだぜ。」
人事部長は大声で笑って見せるとヨシダの肩をたたいて会議室を出て行った。