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蜜戯
【SM 官能小説】

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蜜戯-8

 葡萄の戯れは、それだけで終わらなかった。硝子の器の中には、まだ半分ほど葡萄が残っていた。彼は、後ろ手に手首を紐で縛った裸のわたしをソファから立ち上がらせると、わたしが愛用している安楽椅子に座らせた。
「ミヅヨさんには、まだ葡萄を食べられる唇が残っています……」そう言った彼の目がとても美しい残酷さに充ちていた。
「脚を開いてください」
椅子に腰を降ろしたわたしは、彼に催眠術にかけられたように太腿のつけ根をゆっくりと開いた。
それがどんなに恥ずかしい姿だったことか。彼はわたしの開いた両肢を裂くように持ち上げ、それぞれの脚の太腿をゆるやかな線を描いた安楽椅子の肘掛けに乗せかけた。太腿のつけ根が無理やり裂かれるようにぐっと開き切り、臀部が柔らかな座面に深く沈み、あられもなく恥部だけが前に突き出し、疎らな陰毛に覆われた秘所が剥かれるように淫らにあらわになる。
ああっ………こんな………恥ずかしいわ。
思わず嗚咽が零れる。彼は表情ひとつ変えることなくわたしの秘所に視線を注いでいる。それでもわたしは、こんな羞恥の姿もいつのまにか彼に晒すことができる自分に色濃い火照りを覚えた。

股間に彼の視線が入り込んでくる。身動きできない無防備な肉体の中心を男性に見つめられることは初めてだった。いや、死んだ夫でさえわたしの性器をこんな風に見つめたことはなかった。
そんなに見ないで欲しいわ……。 
そう言ったわたしの言葉をさえぎるように彼の視線は、容赦なくわたしの太腿のあいだの薄肉が合わさった溝をなぞる。その恥ずかしさは、逆に彼にもっと性器を見つめられ、わたしの記憶を甦らせて欲しいという欲望に近くなっていった。
彼はわたしの姿に満足したようにゆっくりと椅子の前に跪いた。彼の手がわたしの膝頭を優しく撫でまわし、太腿の内側に滑り込み、腿のつけ根へと伸びてきた。
彼の片方の手に大きめの数粒の葡萄の実が握られていたのを見たとき、彼が何をしようとしているのか、わたしは初めて気がついた。これから彼が行おうとしている恥辱を拒めないという意識は、わたしの肉奥を甘美に火照らせ、渇いた空洞は微かに呼吸を始め、老いた陰唇はさらにゆるんでいく。
彼は左手の掌の中から右手の指でひと粒の葡萄の実を摘まむと、薄い陰毛を掻き分けるようにわたしの陰唇にゆっくりと含ませていく。
 あっ…………
 微かな嗚咽が零れる。彼の指の体温がまぶされた葡萄の実の冷たさが肉襞に伝わってくる。ずっと触れられたことのない肉奥が目覚めさせられたように微かにふるえ、失われた記憶の表面が撫でられたような気がした。
「ほら、まだ食べられるでしょう……」と彼は酷薄な笑みを浮かべた。
「いじわるね……」わたしは嗚咽をかみ殺すように言った。
彼の美しい指から葡萄がひとつ、またひとつ、わたしの中に放たれていく。ゆるんだ肉奥に含んだ葡萄の実がまるで彼の指のように思えてきた。微かに震える肉奥の音が幻覚ように聞こえてくると、懐かしい潤みが蕩けるように拡がっていく。それは充たされていく自分が途方もなく高いところに抱き上げられ、体の色を濃くしていく感覚だった。
 彼はわたしをじっと見つめて言った。
もっと欲しいですか……。
彼の中指と薬指のあいだに挟まれた葡萄の実がさらにわたしの中に忍び込んでくる。肉唇に彼の指を感じたとき、わたしの中で葡萄の実が弾けたような音がした。そして赤い葡萄の汁は、まるで遠い昔の初潮の血のように内腿に筋を描いて流れていった。



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