ライブラの女 バランスの章-2
数分歩くと「待って」と美佳から呼び声がかかった。
「ねえ。もう少し遊びましょうよ」
気軽そうに声を掛ける彼女に苛立ちを感じながら思わず「ホテルにだったら行ってもいいよ」と言ってしまった。心の中でしまったと思ったが美佳はケロっとした様子で「いいわよ」と言いすぐにタクシーを止め乗り込んだ。
美佳はすまし顔で運転手に「一番近いラブホお願い」と言い、窓の外の流れる景色を見ている。どうにでもなれと半ばやけになり彼女に合わせた。
美佳が選んだ部屋は久しぶりに見るギラギラとしたけばさを感じさせる極彩色のピンクと紫で埋め尽くされている。
「せっかくだし、日常と関係ない感じじゃないとね。シャワー浴びてきます」
手際よくあっさりとバスルームへ向かった彼女を見送り僕はベッドに寝ころんだ。目にちかちかする色合いを見ていると自分が道化師にでもなったかのように感じてくる。
「お待たせ。あなたは?」
濃いピンクのバスタオルを巻きつけた身体で僕の上に馬乗りになりネクタイを外す。
「浴びてくるよ」
薄いブルーのネクタイを彼女に渡してシャワーを浴びに行った。
美佳はベッドの上でゴロゴロと気だるい様子で寝そべっている。怠惰なのにエレガントだ。半裸で美佳の上に覆いかぶさりバスタオルをはぎ取った。
「君はこうやってよく男を誘ってるの?」
「ふふ。どうだと思う?」
娼婦ではないと思う。受け身なのか能動的なのか、彼女の望みは何なのか今一つつかめない。
全裸にして美佳の身体を眺めるとなかなかのプロポーションだ。滑らかな柔らかいS字ラインは理想的だ。乳房も横向きにさせると円錐型で日本人離れをした美しい形に薄紅色の乳頭が品よく乗っている。腰も張っているのに太腿から膝下までまっすぐ伸び、ふくらはぎはきゅっと引き締まっている。
「すごく綺麗な身体だね」
「ありがとう。でも見てくれる人が誰もいないの」
淫靡なラブホテルには似合わない作品のような美しい肢体だ。
「きて」
美佳が首に腕を回す。
「緋月さんこそ、素敵な身体。引き締まっていて逞しい」
「そう」
卵型のつるりとした顔は表情が読めにくい。首から二の腕、脇からわき腹をそっとなぞっても美佳は「ふぅ」と羽のようなため息を漏らすだけで反応が薄い。乳首に吸い付き、舌先で転がしても「はあん」とゆるい声を漏らすぐらいだ。
「気持ちいいところある?」
「全部気持ちいい」
にっこり答えるがつかみどころがなく幻を抱いているような錯覚を起こす。下半身への愛撫をはじめ、色々手を施すが頼りない反応に自信がそがれていく。秘裂は潤い湿り気を帯びてはいるが心もとない。
「君を満足させられる自信がないな」
ため息をついて愛撫を中断してしまうと美佳は身体を起こして背中にしなだれかかる。
「優しいんだ。男って女のことよりも自分が気持ち良ければそれでいいんじゃないの?」
「若いときはそうだったかもしれないね」
「ねえ。普段しないことをして。少しくらい乱暴でもいいの。ね?緋月さんの良いようにしてみて」
「どうしてそんなこと言うの?初めてあった男に」
「どうしてかな。一瞬でもいいから頭を真っ白にしたいのかもしれない」
感情の起伏が薄そうな彼女には実は秘めている重苦しいものが渦巻いているのかもしれない。心の奥底に一瞬触れたような気がして再度愛撫を始めた。
「そうだね。じゃ楽しもうか」
僕はネクタイで彼女の両手首を縛り、彼女のスカーフで目隠しをした。
「目隠しってドキドキする」
「よかった。ドキドキしてもらえて」
クスっと笑い声を立てて行儀よく美佳は待っている。僕はホテルに備え付けられた自動販売機に目をやりバイブレーターとローションを購入した。がたっという音に美佳が反応する。
「なあに?」
「ん。ちょっとしたもの。少し待ってて」
バスルームに行き熱い湯を張った洗面器にローションを沈めた。女性の身体は冷やすと感度が悪くなる。温めたローションをたらりと乳房にかけマッサージをした。
「はふう。あったかくて気持ちい」
股間にも垂らし、指を入れゆっくりと中をかき混ぜるとくちゃくちゃと音が鳴り響く。
「ああん」
少しずつではあるが声が大きくなってきた。足を大きく広げさせ彼女の花弁を丸見えにする。――こんなとこまで美しい。
大小の花弁は左右対称で厚ぼったくもなく薄くもなく品が良い。小陰唇も薄紅色をした蘭の花のようだ。このような美しい秘所を目の当たりにすると思わず嗜虐的な気持ちが沸きバイブレーターを握りしめ局部にあてがった。
「あっ、なに?硬い」
「こういうの初めてかな」
黒いバイブレーターはシンプルな構造でただの筒状ではあるが振動の強弱のスイッチがありぐにゃぐにゃをいびつな円を描く回転式のものだった。そっと弱のスイッチを入れる。
「あうっ、ううぅ、やあっう」
ブウーンと低振動の音が響きグネグネを動きながら花園を荒らす。先端の振動をクリトリスに当て動かさずにしばらく様子を見ると彼女は開いた足をぎゅっと僕の腕ごと閉じ込み「くううううぅう」と耐えるような声をあげ達した。
「ああっ、はあっ、はあっ、ああ」
弛緩した身体を休ませることなくバイブレーターを花園の奥へねじ込む。
「ううううぐううぐううううっ!」
伸ばしていた足をまたM字に開脚させバイブレータの出し入れを眺めた。
「すごいよ。君のおま○こがバイブをすっかり咥えこんでるよ」
「あううう、だめえええ。やあ、やああだぁ」
反応がまた大きくなってきたが、それでも美佳は演技の中にいるかのように乱れ切りはしない。花弁は波打ちながら黒い棒に荒らされているというのに、凛として侵入を受け止めているようだ。