心の映写機-1
友達と遊んだ帰り、夕立が襲ってきた。
分厚くも、どこか明るさと暗さがないまぜになったような雲から降って来る雨は、俺の中の思い出を蘇らせた。
カタ、カタ、カタ。
俺の中の映写機の最後のコマは、雨に濡れた君の姿で止まっていた。
あの日、俺は君の気持ちの変化に気付いちゃいなかった。
ただ君と一緒にいられるのが嬉しくて、相合い傘をして帰ったのを覚えてる。
とにかく俺は君を楽しませたくて、あること無いこと話していた。
だけど君は傘から離れると、降りしきる雨に打たれながら何かを言ったんだ。
あ…………めん…ね。
君は唇を動かすと、一人駆け足で帰っていった。
何故あの時俺は追い掛けなかったんだろう。
俺は確かに彼女の言葉を聞いたはずなんだ。
数日後に俺達は別れて、お互い進路先も別々になってもう会うこともなくなった。
部屋に着くと、意味のわからない苛立ちにさいなまれながら俺は目を閉じた。
数日後、昔の馴染みで集まった。発端は遊び好きな友達の思い付きだ。
皆が馴染みの店に集まる。当然と言うべきか、彼女も来た。
俺は彼女と無意識に距離をとっていたらしい。集まりもお開きになった時、友達の一人に彼女を送っていけと言われた。
俺は意見したが大抵無視される立場にあり、渋々彼女を送っていった。
別に彼女が嫌いな訳じゃなかった。
ただ何を話していいか分からなかった。
二人で沈黙を貫きながら帰り道を歩く。そこには昔の空気は存在していなかった。
突然、雨が俺の鼻先を濡らした。
空を見ると黒々とした雲が立ち込め、見上げた瞬間に雨が降り始めた。
彼女が初めて口を開いた。どこかで雨宿りをしようと。