『綺麗なブルー』-1
誰が彼女を変えてしまったの
彼女は今もこうして、一人の人を待ち続けているだけだというのに。
残酷なまでに、時は過ぎていく…
「ねぇ、ノエル?」
「なぁに?パトリシア…。」
「今日は何曜日だったかしら。」
彼女は毎日こう聞いてくる。
「火曜日だった?ねぇノエル…」
火曜日…。
そういえばあの日は火曜日だった。
「違うわパトリシア。今日は水曜日よ。……火曜日はもう、過ぎたの…。」
「そう。」
夕日の差し込むキッチンに、両膝を立てて座っている彼女の金色の睫毛が輝く。
「じゃあ今日は水曜日なのね。」
六年前のあの日、彼女の“あの人”は帰らなかった。
それでも彼女は待ち続け、今日もなお、私に“あの人の”話を聞かせる。
「彼がね、言ったの。子供の名前は、ジェフかリリーにしようって。」
「そうなの…。」
よく知ってるわ。だってその話はもう、何度目か分からない…。
「ジョシュったらね…」
彼女は彼を愛していた。
そして彼もまた、彼女を愛していた事を、私はよく知っている。
未だ喋りやまない彼女に相槌を打ちながら、私は自室に入り、戸棚を一段引き出した。
中に入っている、私宛ての手紙。
既に黄ばみかけ、何度開いて読んだか分からない。
目をつむっても、一言一句間違えず言える、その内容。