『綺麗なブルー』-3
…また、涙が出てしまった。
これは、もう六年も前に書かれた手紙だっていうのに。
「…ノエル!!」
部屋に夫が駆け付けてくる。
「ジェド?」
「来てくれ!パトリシアが…!」
「?!」
私が手紙を読んで泣いている間、夫が彼女の相手をしてくれていたようで。
私と夫がキッチンに走ると、そこにはパトリシアが立っていた。
「パトリシア…?」
静かにこちらを見つめる彼女の瞳は、ブルーに澄んでいた。
そう、以前のような色で、私達を映している。
「ノエル、ジェド…。私はもう、…逃げるのはやめにするわ。」
「え…?」
「もう…ジョシュは帰って来ないのよね。」
「パトリシア…。」
彼女は後ろを振り返り、キッチンの窓から見える夕焼けを見つめる。
「どこかではちゃんと、分かっていたのよ。でもね…認めてしまうなんて出来なかったのね。彼が死んでも平気で回り続けるこの世界が許せなくて…。」
彼女は、私達の方を向こうとはせずにまだ、窓の向こうを見つめている。
「でもノエルとジェドだって、辛いのよね。それに私は…ジョシュの死を無駄にはしたくないの。風化させたくない。」
そう言ってから私達に顔を向けた彼女の瞳にはもう、迷いは無かった。