通じないパスワード-2
んっ、と先輩の口からちょっと大きめの声が漏れるのが聞こえた。
「ちょっと……掴み方、指の配置も、ちゃんと、支えて」
と凛とした声で、改めて胸を掴ませる……。「ちゃんと揉んで」
――離れた位置に座る悠紀と、もう一人の女の子のメンバー。
冴島茉奈、がフルネームらしい。
クラスの男子の中では人気者で、目を引く美少女と言って良い――その分、競争率も高い。
成績も良いんだろう。蓮見が躍起に口説いた一人だった。
出発前に、蓮見のメンバー構成を聞いて、悠紀としては気乗りしなかった。
「冴島が好きなら三人で行けよ」
「何でだよ! 生徒会にいるんだからパンツ見てあの胸に触れる!」
蓮見は目の色を変えて悠紀の説得に当たった。「ただ、一人じゃ足りないし、もう二人は欲しいな」
「じゃあ一人で行けよ、両手に華で最高じゃん」
「俺、実はケンカは苦手なんだよ。現地でサポートできるの、ササ以外に誰が務まるんだよ」
「何で僕がケンカに強い設定だよ、無駄にメンツ増やすな。仕事自体は単調だろ」
散々、もめて悠紀は参加するつもりしてなかったのだ。
ちょっとした暗記テストが近い、週末は静かに勉強する予定でいた。