男の存在-1
奈緒は高校2年の女子高生。
いつものように学校へ向かうために駅へ向かっていた。
改札を抜けてホームへ降りると、そこである男が目についた。
その男が特に目立つ容姿という訳ではなかった。
20代ぐらいだろうか。
紺色のジャケットに身を包み、彼はホームで電車を待っていた。
朝のラッシュ時間であるこの人混みの中で、なぜ彼だけが目についたのか
奈緒もよくわからなかった。
しかし、それが『異性を気にする目』ではないことであるのは確かだった。
その時は特に気にしていなかった奈緒だが、
その日を境に、奈緒はほとんど毎日同じ場所で彼を目にするようになった。
彼を目にするようになって10日程経った頃だろうか。
毎日のようにホームで電車を待つ彼に目を向けた時だった。
偶然なのか、彼と一瞬目が合ってしまい、奈緒は咄嗟に目を逸らした。
隣の車両に乗っていく彼の横顔を目にした奈緒は、
彼がうっすらと笑みを浮かべているのが分かった。
その笑みは、どこか寒気を感じるような表情に奈緒は感じていた。