逃げられない快楽-3
数日後
会社の廊下で
本部長の加納が目に入る。
紗江:
「やっば!本部長だ!
気づかれないようにしないと…」
紗江は顔をうつ向かせて
目を合わせないようにして
小さく会釈だけをして
すれ違い通り過ぎる。
マナ:
(良かった!気づかれてない!
もうお店も辞めたし
このまま何事もないように!!)
さらに数日後の金曜日の午後
紗江はオフィスで仕事をしていた。
そこに本部長の加納がオフィスに
入ってくる。
紗江は慌ててうつ向き
仕事に集中しているふりをするが
加納は一人一人社員たちの肩を叩き
鼓舞し始めたのだ。
そして紗江の両肩に
加納の手が乗ったところで
営業課長の佐々木のぞみが
声をかけた。
佐々木課長:
「本部長!何かご用ですか?」
加納:
「いやいや!
みんな元気にやってるかなと思って
様子を見に来ただけだよ♪」
佐々木課長:
「それはありがとうございます!
ですが、お気遣い頂かなくても
みんな頑張っていますので
ご容赦ください…」
加納:
「おお♪そかそか!
それは大いに結構♪それじゃ
お邪魔のようなので失礼しますね」
加納はあっさりと
オフィスを出ていった。
ホッとする紗江のデスクに
小さなメモ紙が落ちていた。
紗江:
(あれ?何だろう?)
メモ紙を開いてみると
本部長加納からのメッセージが
書かれていた。
『マナちゃん♡先日はありがとう
会えなくて寂しいです!
今夜20時に○○ホテルのバーで
待ってます』
メモ紙を気づかれないように
ポケットにしまい込み
紗江の顔は青ざめてしまう。
制服からスーツに着替え
指定の時間にホテルへと到着する。
バーに入ると
加納が紗江に向かって手を振っていた。
加納:
「待ってたよ♪
お店辞めちゃったんだね?」
紗江:
「本部長…
気づかれていたんですね?」
加納:
「もちろん!君の面接官は
私だったしね♪
すぐに気がついたよ♪」
紗江:
「あの…私…どうなるんですか?」
加納:
「まぁ座りなさい…
まぁ君も一杯飲みなさい」
加納に言われるがままに
隣の席に座り
加納が飲んでいる
バーボンを注がれ
少しだけ口をつける。
加納は無言のまま
タバコに火をつけ
ロックグラスの氷を中指で
グルグルとかき回す。
無言の時間が続くと
紗江は我慢出来なくなり
再び同じ質問を口にする。
紗江:
「あの…私…どうなるんですか?」
加納:
「どうもならないよ♪
ただ社内で変な噂が広まると
経営陣も黙ってないだろうけどね」
紗江:
「私はどうしたら良いですか?」
加納:
「さぁね♪どうしたら良いのか…
とりあえず連絡先を
交換しておこう…」
紗江はしぶしぶ加納と
連絡先を交換すると
すかさず加納が話し出す。
加納:
「まぁ会社としては
良くない事だしね
私が何とかしてあげても
良いのだが…」
紗江:
「お願いします!
やっとの思いで入社出来たんです!
何とかお願いします!」
加納はニヤリと笑い
グラスの氷を回している。
その無言の時間が紗江には
たまらなく長く感じた。
加納はグラスに残っている
バーボンを一気に飲み干すと
立ち上がる。
少しびくっとした紗江は
加納を見上げる。
加納はそのまま紗江を見下ろし
微笑み
バーを立ち去ろうとする。
紗江はどうして良いのかも解らずに
無言で
加納の後ろをついていった。
ホテルの部屋に入ると
加納は直ぐさま
紗江にアイマスクを着けさせた。
加納:
「この前のアイマスク
すごく興奮したよ♪マナちゃん♡」
紗江:
「あ、あの…本部長…」
加納:
「マナちゃん♪
来てくれるなんて嬉しいよ♡
今夜は楽しもうね♪」
紗江:
「え!?あ、でも、あの私…」
紗江の言葉を無視して
加納は紗江の手に
手錠までされてしまう。
手錠の鎖を引っ張られ
ベッドまで連れていかれ
座らさせられると。
加納は鎖を放し
何もせず静かにしている。
視界を奪われ静けさが
必要以上に
紗江の不安を増幅させる。
テレビのスイッチが入れられ
CMの音が流れだし
加納の位置が
雰囲気でも解らなくなってしまう。
紗江:
「あ、あの…本部長…
アイマスク外して良いですか?」
加納:
「ダメだよ♪
それじゃ楽しみが台無しじゃないか」
加納の声で正面に居ることが解るが
手錠を一旦外され
後ろ手につけ直され
アイマスクを
自力で外せなくなってしまう。
ストッキング越しに膝を触られる。
その手は内ももをもさすりながら
肩を抱かれる。
紗江:
「あの…本部長…」
そう言うと
顎を持たれ唇を奪われ
舌が中に入ってきた。