そして暗い過去が蠢き始める・・・-2
過去、芳恵には暗い影がいくつもある。その1ページに、あるオトコによって穢されたカラダ。硬く乾いた、枯れ枝のような指が彼女の中に差し込まれることによって、その忌まわしい記憶の扉は開いてしまった。
そのオトコ、芳恵の大事な個所を蹂躙することしきり。ある日あろうことか様々な棒状のものを用意し、彼女の前に並べ、次々と挿入された過去がある。その暗い記憶が呼び覚まされてしまったのだ。
一度それが、ヒトの指ではない異物、と思ってしまったら最後。老人が股間を覗き込み、指を挿し込む姿を見ても、脳裏では異物を挿入されている感覚に変換されてしまう。
「あああっ、や、やめてッ、せ、先生っ・・・」
怯える芳恵の声が、老人の耳には、オンナの本性が吐露し始めた喘ぎ声にしか聞こえない。中指を奥の奥まで挿し込み、中でくりくりと回し、芳恵の弱点を次々と押さえてゆく。
「うっ、ううっ、い、いやっ・・・」
そうなると、異物に犯される感触がますます芳恵の中に広がってゆく。
「気分出してきたな、芳恵君。いい感じだよ、うん」
芳恵の局所に顔を埋め、彼女の滴り始めた淫水を啜る。閑散とした事務所内が湿った振動の音が響き渡り、
「あうーっ」
絶望に似た呻きがあと追うように、芳恵の震える唇より漏れ響いた。
「ふぁはっはっはっ、気分出してきたね?芳恵君?・・・こっちも、どうだ?」
鴨居老人の指は吸血鬼ノスフェラトウのように細く長い。中指で芳恵の膣を犯しつつ、人差し指をすぼまりに突き立てた。
「ひいっ!」
芳恵は飛び上がりそうになり、計らずも老人の肩に縋るように掴まった。
「ふふふ、こっちも好きなんだろう?開発済みなんだろう?ん?話してしまえよ」
芳恵は固く目をつぶり、いやいやをする。
「やめて・・・やめてください・・・。お尻は・・・いや・・・」
「いやじゃないだろう?するする入るよ?・・・ほら、ここが好きなんじゃないか?」
老人の指を受け入れた芳恵のお尻の穴は、そのまま付け根まで呑み込んでしまった。彼女の性器ではないその個所で、鴨居は突き当たる腸壁を指の腹でそっと押す。ビクビクっ、と芳恵は全身をわななかせ、辛そうな表情で恨めし気に老人を見つめた。
「ここは効くだろう?直腸を通して、子宮を指で触られる感覚、堪らんだろう?・・・ほう、またドバっと出てきたぞ?」
鴨居老人はそう呟くなり、再び芳恵の股間に顔を埋め、彼女の淫水を音を立てて啜り上げた。
「ひいっ、ひいいいっ」
たまらず芳恵は悲鳴を上げる。目蓋を開けてはいられず、軽く目を閉じた瞼は、ヒクヒクと痙攣していた。
「僕が若ければなぁ。芳恵君のお尻にも挿入して、奥を突き、イカセてあげたであろうなぁ」
いかにも残念そうに囁いた。
「イキそうか?な?イキそうなんだな?」
老人がそう迫れば、芳恵は顔を歪ませ首を振る。
「そうか・・・。指では足りないのか・・・」
寂しそうにつぶやくと、老人は芳恵の中から二本の指を引き出した。
肩で喘ぎ、項垂れてぐったりの芳恵を残し、老人はデスクの引き出しのカギを取り出し、開けた。
「こんなもの、仕事机に隠していると妻に知れたら、なぁ」
鴨居老人はやはり瑠璃子夫人が怖いのだ。ぶるると身震いひとつして、引き出しの中からショッキングピンクの異形を取り出した。
芳恵の目の前にかざし、老人はニヤリと笑う。男性のシンボルを模した異形だ。
「あああ、いや・・・それはダメです・・・」
芳恵が髪振り乱し、叫ぶ。老人の手からそのディルドゥをもぎ取ろうとした。
「おやおや、今日は本当にどうしたんだ、芳恵君。以前、このおとなのオモチャを使った時は、気を失うほどにイケただろうに?好きだろう?コレ?」
老人が淫具のスイッチを入れた。それは振動し、重々しく頭をぐるぐると振り回し始めた。
「足を閉じるんじゃない、開け。・・・ふん、仕方ない。追加だ」
鴨居が胸の内ポケットから財布を取り出し、札を5枚数えると、芳恵のスーツのハンカチポケットにねじ込んだ。
「さ、足、開くんだ」
いつの間にか命令調の口調になった鴨居老人は、睨み上げるような目付きで芳恵を見つめる。
(あああっ、いやっ、その目・・・。アイツの目・・・)
芳恵の暗い過去が、彼女の理性を奪ってしまう。彼女の記憶に刻まれた、爬虫類のようなその目付き。命令と復命、その繰り返しが、一時彼女を支配していた。芳恵のカラダに刻み込まれた、習性ともいえるそのトラウマ。芳恵の表情から理性が消え、呆けたような表情になってゆく。芳恵は鴨居老人に、足を開き、すべてをさらけ出していた。