仕事始めに-1
芳恵の運転する車に乗り込むのはちょっとした勇気がいる。彼女の運転はどこか危なっかしい。だが慣れれば、助手席の役得がある。芳恵の、ミニのグレースーツ姿に、欲情しないはずがない。
「う、運転だから・・・ダメよ」
そう言いながら、芳恵は座席の上で足を開く。
「パンスト、気を付けるのよ?爪を引っかけないでね」
と注意しながらも、僕に秘所を弄らせてくれる。
車内の密室だ、窓は締め切り、エアコンの調子もいい。昨晩、声を上げまいと我慢したうっぷんをここで晴らすが如く、彼女の喘ぎ声で朝のカーラジオニュースが全くと言っていいほど、耳に入ってこない。元より、カーラジオなど聞くつもりもないのだが。
「あーっ、ダメダメーっ。イッちゃうっ、イッちゃうからっ、クリはダメッ!」
彼女のトロトロになった膣から指を引き抜き、何度も何度も円を描いでクリトリスを可愛がる。芳恵は耳に痛いほどの絶叫で、運転席の中、身悶えを繰り返した。
「あーん、もうっ。下着がびちょびちょじゃない・・・。登記所の女子トイレは狭いんだから」
僕は彼女の淫水でふにゃふにゃになった自分の指を舐め取りながら、ニヤニヤ笑っていた。
芳恵の勤め先は、古いビルの一階にあった。なんでも、登記所の行政書士がビルのオーナーで、かつては十数人が勤める事務所だったらしい。
現在は行政書士2名、事務員として芳恵が雇われている。2名の行政書士は、老夫妻。鴨居老人とその妻、瑠璃子。どちらもシワシワの老夫妻だが、人当たりも、品もいい。
好々爺という言葉がぴったりとする鴨居老人は矍鑠としているが、既に70歳は越している。枯れ木のような指で僕の履歴書をこつこつと叩き、二三、言葉を交わしてすぐ、
「合格、ですな」
と言った。
瑠璃子夫人も良いおばあちゃんだ。あれこれとゴミ捨て場はここ、トイレはこっち、おやつは何が好き?と細かく世話を焼いてくれる。
段ボールが積まれた書庫を見たときは、さすがに肝を冷やした。僕の背丈よりも高く積み上げられた書類の入った段ボールの山が、数百はあるという。どうやって積み上げたのかもわからないこの書類の山を、芳恵とともに選別し、シュレッダーにかけるのが僕のアルバイト。提示された給料の、高額なわけが良く分かった。