朝食のひと時-1
翌朝の食卓は、遥香のお陰で終始明るいものになった。昨晩、遥香は自分が寝ているうちに、僕が帰ってしまうものと本気で心配していたらしい。朝になって、僕が居るのを知ると、誰よりも喜んでくれた。遥香は僕の隣に陣取るや、これ食べて、あれ食べて、と次々朝食に並んだ料理を勧めてくる。彼女にしてみれば、おままごとのつもりだろうが、朝食はあまりとらないライフスタイルの僕にしてみれば、結構な苦痛。僕が困る顔をするのが面白いのか、芳恵も牧子も声を立てて笑ってくれる。明るいひとときを過ごすことができたのは、屈託のない遥香のお陰であった。
牧子の前では相変わらず、口数の少ない芳恵である。昨日の昼から続く、僕との激しい情交の痕跡など、おくびにも出さない。
そして牧子。彼女が僕らのセックスを覗き見ていたのは間違いないと思う。芳恵も僕も気づいた通り、僕らのセックスを愉しみつつ、バナナでオナニーをしていたのも間違いないだろう。だが牧子もまた、芳恵の前ではいい母親、遥香の前ではよいおばあちゃん、僕の前では気の良く優しい親戚を演じ切っていた。
保育園に行く遥香を牧子に預け、僕と芳恵は、芳恵の勤め先に車で向かう。形式だけだが、僕のアルバイトの面接があり、そのあと、彼女の勤める登記事務所でアルバイトをすることになっている。段ボール山積みの書類に男手が欲しいらしい。