『THE ENDLESS』外伝〜光羽編始の章-2
バタン――
涙が出てきた。このゲームってこんなとこまで再現できるんだな……
泣いている時、自己の精神の分裂を知る事がある。ただひたすら打ち拉がれる自分と、それを冷静に見つめる自分。徐々に泣きの自分は萎み、冷静な自分は膨張する。
「美葉……」
声が震えている。
「もういいのか?光?」
「ああ」
美葉が入って来る。その目は赤かった。
「事態の把握の為に質問を幾つか」
「光らしいな」
今は自分でも驚く位冷静だ。その上、頭も冴えている様だ。
「さっきログアウトできなかったのは何故だ?」
「それは私にも分からない」
「大体何故俺はログインできている?」
「それは」
美葉の話はこうだ。
俺が入院してから暫く経ったある日、美葉の元に一本の電話が届いた。そいつはTHE ENDLESSの開発者代表と名乗り、ログインを勧めた。美葉は迷ったらしいが、一週間後に実行した。
後、俺がログアウトしようとした時脳波が乱れ、一時危険な状態になったらしい。
「脳波……そう言えば、今の俺の脳波はどうなっている?」
「覚醒時とレム睡眠の中間に近い状態らしい」
「…何時かノンレムの状態が来そうだな」
「その時は仮ログアウトという事をするらしい」
「仮ログアウト?」
「私にもよく分からん。一日七時間程度、ゲーム中で眠る様な感じになるらしいが…」
俺は何故か自分が人間でなくなった様な気がした。
「そうだ、俺の両親は…?」
「それが……治療の一環と説明し、光が今こうなっている事は知らせていない」
「何!?」
「そうするのが条件だったんだ…」
「……」
沈黙が続く…
「……他のメンバーが来るまで後何時間だ?」
「もうすぐだ」
キィ――
「あれっマスター?」
「ミリアか…」
「最近寂しかったんですよ」
自分でも驚く位『第三者が現れた』との思いが強く感じられた。何だこの感じは…
「あ、マスター。ちゃっす」
「今日は勉強の息抜きですか?」
「今は忙しいのでは…?」
鋭刃とシエル、蓬莱も来た。人数が増えるにつれ、逆に俺の孤独は強くなっていった。