邂逅-1
運転席の叔母を見るのも初めてだったし、そもそも、いつものおとなしい彼女のイメージとは違って見えた。黒革製のジャンパーを着て、首には緑色のスカーフを巻く。手には指を出すタイプのドライバーグローブを嵌め、デニム地の白いパンツを履いていた。
「なぁに?」
じろじろと遠慮なく、そして物珍しそうに眺める僕の視線に、叔母はサングラス越しに短く言った。
「い、いや、そ、そのう・・・。い、いつもの芳恵叔母さんとずいぶんイメージが違って見えたから・・・」
芳恵叔母はニヤッと笑いを浮かべたが、何も言わずに運転を続けた。
助手席は落ち着かなかった。叔母の運転も荒いため、ひやひやする。川沿いの隘路を、対向車がいるというのにスピードを緩めずに行き交ったり、赤信号ぎりぎりで交差点を通過したりする。ブレーキも遅く、停車中の車両に何度も、追突するかと思う場面が何回もあった。お陰で駅から30分足らずの墓所のある寺院に着くまで、僕はへとへとになっていた。
墓参りの最中も、叔母は黙って僕に付き従い、僕が仏花を活けた後の手直しや、墓石の磨きが足りない個所を入念にしてくれたりもした。その間の会話といえば、言葉少なに、
「この菊は、左右が逆の方が見栄えいいよね?」
と、
「たわしで強く擦ると、墓石が削れちゃうよ」
と二言のみ。
叔母は機嫌が悪いのかと表情をそっと覗いてみても、終始笑顔で楽しそうなのが不思議だった。