不倫の顛末-5
もう、言い訳は出来ない。セクハラだと言えない。
自分から咥えたおちんちん。その味と香りは癖になる。頬張って唾液をたっぷり塗りたくる。私の口は舌の口と同じ役割を持って男性器を悦ばせる道具になる。
じゅるじゅると卑猥な音を立てながら顔を前後に動かして、硬くなっていく肉棒に私も嬉しくなっていく。
「はしたないなぁ櫻木くん。そんなにがっついて。よほどちんぽが好きなんだね」
頭を撫で撫でされる。
玩具では無い。これが本物のおちんちん。熱くて火傷しちゃいそう。しゃぶっている内に気持ちがどんどん昂ってくる。
これ好き…。
係長の腰も前後に動き出して私の口で擬似セックスの体(てい)となる。
少し苦しい…。段々と激しく腰が動いてきて、鼻での呼吸が間に合わなくなる。でもその苦しさが、乱暴さが、M気質な私を更に興奮の坩堝(るつぼ)へと誘(いざな)う。
「時間だ、櫻木くん」
そう言うと係長は私の口からペニスを引き抜くとズボンの中へそれを仕舞ってチャックを閉めた。
なに?なんで?今どんどん気持ちがノッてきたのに…。
ああ、もしかしてここで入れられちゃうの?こんな社内で私のこと……。
「これ以上席を外していたら皆に不審に思われるしね。ああそうだ、冷めてしまったが珈琲でも飲んで唾液と我慢汁だらけの口をスッキリさせなさい」
係長はカップを持つと私に渡してきた。
凄い中途半端なところで止められて私の気持ちは落ち着かない。あそこだって触られて無いのに濡れているのが分かるほど欲情が溜まっている。
だけど─────
良かったのかもしれない。泥沼に嵌るところだったのだ。少し冷静になって考えると確実に私がおかしなことをされて、私からもしている。しかも相手は係長だ。
確かに私はおじさんが好みのタイプだけど、係長は既婚者だから除外されなければいけない。
私はカップを受け取ると珈琲を一気に飲み干した。
「良い飲みっぷりだな。さあ櫻木くん、仕事へ戻ろうか」
そして係長は部屋から出て行く。私も慌てて乱れた衣服を急いで正すと、係長を追う様に部屋から出た。
※
昼休憩まで30分。私はファイルに目を通しながら珈琲を啜る。
………思ったより効果があった。
呼吸は荒く、意識が散漫しているのか仕事が手についていない。時折何かに迫られるように身体を縮こませている。
もう逃れられまい。そう思った。
ジャケットの内ポケットから小さな小瓶を取り出して眺める。ほんの一滴垂らせば血液の循環が高くなり体温を上げ、心拍数も上がり触覚神経が過敏になる薬。世に言う媚薬というものだ。非合法ではあるがこれがバレたことは一度も無い。花蓮もまた、この薬で簡単に堕ちたのだ。
櫻木リカは稀に見る美巨乳の持ち主だ。尻も安産型で余分な肉が少し付いてはいるものの、そこがまた唆(そそ)る。花蓮には無い大人の色香がそこにある。
櫻木くんは彼氏もおらずそのすけべな肉体を一人で持て余しているようだった。樋口なんぞに渡すのは勿体ない。私が彼女を骨までしゃぶってやる。そして思うに櫻木くんは…いや、リカは気が強そうに見えてMであろう。被虐心をくすぐってやると何度もその素顔を私に見せた。
私は思い出す。リカの柔肌を。甘い声を。
高級な肉を口に含んだ時、口内でとろけるあの感覚に近い。あれだ。櫻木リカの体はそういうものだ。頭の中で思い描いただけで涎が溜まる。
しかし、まだだ。あの手の女には焦らしが必要だ。その上で自分から求めてくるように躾なければならない。
リカは身体を縮こませて何かに耐えている。薬の効果はまだ冷めやらないのだろう。
昼休憩になると彼女は席を立ち、オフィスから出て行く。私は何食わぬ顔でその後を追った。