帰らぬ妻 (3)-2
「まだメール終わらないの?」というFの声。「ごめんね」と謝るゆき。
パンパンパンパンという音、妻の喘ぎ声。胸が締め付けられる。
「旦那が直接、声……聞き……たいん! だって……ぅふん!」
「いいよ。聞かせてあげなよ」
「いいの?」
「いいよ」
「ありがとう。じゃあちょっと電話してくる……ん……!」
「違うよ。アナルセックスしながらだよ」
「えー? 無理、んふん……!」
「動かないでじっとしててあげるから。俺ゆきと離れたくない。ずっと繋がってたい」
「でも……」
「ゆきも離れたくないでしょ。ほら、アナルにチンポ突っ込まれてこんなに喜んでる」
「ぁはん! ぁああそこ……気持ちいい!」
「ずっと繋がってようよ。こうやって、ほら!」
「ぁぁああ! ゆきもFくんと離れたくない……繋がってたい! あぁそこ……もっと突いて、気持ちいい!」
「じゃあ早く、旦那さんに電話して」
「うん、わかった。絶対動いちゃだめだからね」
《電話すればいいの?》
《うん》
《わかった。電話口では『仕事で泊まりになる奥さん』だからね。話合わせてね》
《オッケー。万が一でも聞かれたら困るもんね》
すぐに電話がかかってきた。
「もしもし……パパ?」
少しかすれたささやき声。ゆき自身は普通の声を出しているつもりだろうが、セックス中のセクシーな声が抜けきっていない。
「ごめんね。なんか、思ったより時間がかかっちゃって。ん……んん!」
「いいよ。一日中お仕事大変だったね」
「……! う、うん……っ」
咳払いでごまかしているが、Fが約束を破ってペニスを動かしているのがわかる。当たり前だ。旦那に電話する人妻を喘がせたくない男など存在しない。
「アナルセックス、俺と今日できなくなっちゃったね」
「うん、ごめんね……………………っ! ん…………」
切羽詰まった吐息を感じるたびに、胸が締め付けられる。ああ、ゆき――。今まさに、愛する妻の肛門の中に、夫以外のペニスが入っている。
「ねえゆき、イエス、ノーで答えてくれる?」
「……なに?」
「ひょっとして今、Fさんとセックス中……?」
「な、なんで……?」
「ときどき喘ぎ声っていうか……エッチな吐息みたいなのが聞こえるから」
「…………」
さすがに答えに詰まるゆき。
「…………明日午前中には帰る…………ん、んん!」
「ほらまた聞こえた。ねぇ、怒らないから正直に答えて。俺めちゃくちゃ興奮してるんだよ」
「ありがとう……喉の調子が悪くて……んん! 疲れてるのかな……んふ……っ」
「答えてくれないと泊まり許可しないよ」
「…………っ!」
「Fさんのチンポ、今ゆきの中に入ってるよね?」
「うん……」
「あぁやっぱりそうなんだ! やばい、興奮しすぎてやばい……!」
「もう……」
かすかな笑いが聞こえてくる。私が怒っていないことがわかり、緊張がほぐれたようだ。
「ゆきの中に、今、俺じゃない男のチンポが入ってるなんて」
「ごめんね。これも大事な……お仕事だから……んくっ……!」
「一晩中ずっと仕事するの?」
「一晩中?……うん、そうだね……。ずっと、してると思う……」
「大変なお仕事なんだね」
「うん、でも……好きでしてることだから……」
私を興奮させる余裕まで出てきた。
「気持ちいい?」
「うん……ん、んん!」
「でも俺とのセックスのほうがもちろん気持ちいいよね?」
「全然。ごめんね」
含み笑いして答えるゆき。
「まさかアナルセックスじゃないよね?」
「……! うん……」
「本当?」
「うん」
「帰ってきたら絶対俺とアナルセックスしようね。休んでからでいいから」
「うん」
「ゆき、愛してるよ」
「うん。私も」
「ゆきもちゃんと言ってよ。Fさんの前で。Fさんにチンポ挿れられながら」
「…………」
「……俺のこと意地悪だと思ってるだろう」
「うん……っ! ばか……」
また小さな笑いが、私たち夫婦の間に流れる。笑いながら咳き込むふりをするゆき。
「ごめんねゆき。困らせて。もう電話切るね」
「………………」
「じゃあね、ありがとう」
「………………うん」
「気をつけて帰ってきてね」
「………………ねぇパパ………………大好き……!」
「ゆき!」
「愛してる……んん! ん……! パパ、大好き。早く会いたい……! んん……! ぁ……!」
「ありがとう、ゆき」
「パパ……だ、い好き……だよ、んんん! ぁ……ん!」
Fがいたずらでゆきの肛門性感帯を責めているのだろう、妻の吐息が激しくなっている。私への愛を語りながら肛門を犯されるというのはどんな気分なのだろう。世界中探しても、アナルセックス中に夫と電話させられる妻など存在しないのではないだろうか。
「喘ぎ声我慢してるゆき、可愛いよ」
「ふふふ……っ! んん……!」
「今晩はたっぷり楽しんで。声聞かせてくれてありがとう」
「ううん。こっちこそごめ……ん、ありが…………とう」
「気をつけて。また明日」
「うん。おやすみ、なさ……い……」