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恵鐘館ものがたり
【幼馴染 官能小説】

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美空と武-3

 (そういえば、スマホを見ているでもないし、どうしたのかしら。それに今までも)

 一緒に雨宿りすることになった少年の、所在なさげな様子で美空はふと疑問を抱いた。
 今どきの子ならこんな時、スマホ片手に時間を潰していそうだが彼はそうする様子も無い。
 思い出してみれば、今までもスマホを見るでもなくぽつんと座っている事が多かった。
 美空の心の中で、彼への疑問と心配が次第に大きくなっていく。彼女の気持ちを演出するように空は黒く曇り、強い雨がざあざあと四角錐の屋根を叩いている。
 すると、おずおずと彼が学校のカバンの中からタオルを差し出した。

「あ、あの……これ。せめて頭だけでも拭いてください」
「え?あ、ありがと」

 髪を拭い、顔もメイクが落ちない程度にそっと水を吸わせるだけでも、少しさっぱりした。
 彼女を気遣う様子の少年が、そっと声をかけてきた。

「お姉さん、冷えませんか?」
「ううん、大丈夫よ。それよりこれ、ありがとう。洗って返すから、ええと…ごめんなさい、お名前は?」
「若松です。若松 武です」
「困った時は、お互い様ですから」

 あまり男性に対して積極的ではない美空は、彼に対してはすらすらと自分の名前も明かしてしまう事に内心で驚いていた。

 


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