抱擁-1
『みんな、いい絶対優勝だからね』
そう言う千鶴のまわりにあたしたちは円陣を組む。『いくよ。三組ファイト。』
『オー!!』
五月晴れに照らされたグラウンドの中、一際大きな声援があがった。
抱擁
あたし、小岩井彩夏。
普通科の高校に通っている二年生です。
今日、あたしたちの学校では体育祭があります。
実はあたしは、一年の時のクラスで三位を経験していたりします。
もちろんあたしも熱くなっゃているんだけど、特に友達の千鶴はとっても燃えちゃってるみたい。
あたしたちのクラスは燃える千鶴を中心にして、一ヵ月前から練習を初めていたりしていたの。
最近仲良くなった涼子ちゃんはあんまり運動が得意じゃなかったみたいだけど、千鶴のお陰か日々成長を遂げてるようです。
ちなみに、競技は女子がバレーとテニス。
あたしたち三人はバレーをしています。
『いやぁ。彩夏も、それに涼子ちゃんもずいぶん上達したよね』
『まあ、千鶴の教え方が上手かったからね。あたしバレーは性に合わないと思っていたけど、やればなんとかなるもんだね』
『うん。わたしもこんなに上達できるなんて思ってなかったですし』
こういう時は千鶴が頼もしく見える。
『二人が一生懸命練習してくれたおかげだよ。それよりも試合、がんばろうね』
あたしたちは千鶴に先導されるまま、試合と応援の熱気で包まれている体育館に入った。
すでに始まっている前のチームの試合を見て、あたし達の気分はさらに高まる。
『ちょっと彩夏見て。あれって雨条三姉妹もとい雨条センパイじゃない?』
千鶴がいう雨条三姉妹は、あたしと千鶴のセンパイで、三つ子なので容姿がそっくり。
一応、長女が詩帆、次女が真帆、三女が華帆センパイということみたいです。『うわ。センパイ達ってやっぱりいつも一緒なんだ。』
『動きもぴったり。もともと容姿が似ているだけに相手は相当苦戦を強いられますね』
そう言って、涼子ちゃんは冷静に戦況を報告する。 それでも、涼子ちゃんは相当熱くなっているみたいで、普段とは違う彼女をみた気がしたわ。
まあ、それも当然なくらいもともと注目されていた試合だったので、あたしもその試合に夢中になる。
その中で攻撃を仕掛けようと、高いトスが上げられる。
『あっ。あれは三位一体攻撃!?』
そう、センパイたちは某漫画宜しく三人でスパイクをたたき込むべく跳躍をはかる。
『きゃあああ』
センパイたちは男子に人気なのはもちろんのこと、そのお姉さま的性格から女子の人気も凄まじい。
黄色い声が飛ぶ中、センパイたちの強烈なアタックが地面に叩きつけられていた。
『センパイお疲れさまです』
試合が終わったセンパイにあたしと、千鶴が駆け寄り、涼子も後から付いてくる。
その様子に詩帆センパイが気付いてこっちの方に顔を向けました。
『あらあらあら。彩夏ちゃん。千鶴ちゃん。試合、見てくれたんだ』
そう言いながら、タオルで汗を拭うセンパイたち。 その様子に千鶴は羨望の眼差しを向ける。
『はあ。センパイたちって文武両道の上にそのスタイル。羨ましい。あたしもそれほどあればなあ』
ちなみに千鶴が何を比較したかあたしはあえて突っ込んだりしなかった。