女将を誘ってみる-1
部屋に入ると、布団が敷いてあった。
すぐに女将が、ビールを持ってきた。
『さきほどの、女性と遊べるところ、というお話ですけど、、。』
と、女将が切り出す。
『もう、下呂にはほとんど、そういう場所はなくなってしまったようで、、。』
と言う。
続けて、
『唯一、女性が待機している、そういう専門の宿があるようなんですが・・・』
と、話し出す。
たぶん、置屋のようなものだろう。
『値段とか、女性の年齢とか、分かります?』
と、野田が聞く。
『えっとですね、ショートで2万円で、30代の女性がお相手だとのことです。』
『そうですか、、』
と、野田は気のない返事をする。
たぶん、女将は聞いてきただけで、ショートとかの意味は分かっていないようである。
『やっぱり、若い女性がいないと、楽しくないですよね?』
と、女将が言う。
『いや、違うんだ。ショートってことは、1回やって、即終了というのがねぇ、、、。』
『はい。』
『年齢はどうでもいいんだけど、、はっきり言うと、女将さん、あなたのような女性がお相手してくれるのなら、喜んで2万円払うよ。』
女将は、ちょっと驚いている。
『その30代の女性は、女将さんより、綺麗な人?』
『いえ、ちょっと分かりかねますが、ただ、私より一回りも若い方みたいですから、、、、』
『私は、女将さんのように、笑顔の可愛い女性がいいんだよね。年齢は、関係ないよ。』
女将は黙ってしまう。
『女将さん、今日、客は私1人でしょ?』
『はい。』
『じゃあ、私が布団に入ったら、もう仕事はないと思うので、よかったら夜の11時、部屋に来ませんか?』
『えっと、、さすがに、そういうことは、、、』
『もちろん、道義的な問題とか、いろいろあるでしょう、、気が向いたらでいいですよ。』
『・・・・・』
『もう一度言いますが、私は女将さんのような女性が好みなんです。』
女将が下がり、野田は部屋で、ビールを飲んでいた。
<確率は五分五分か、、>
と、考えている。
チェックイン時に渡した、チップの5,000円が、こういう時に効いてくると思っている。
その頃、女将は迷っていた。
今日の唯一の客である野田は、悪い人ではなさそうである。
何より、チップをくれた。
今時、心付けという習慣を知っている人は、ほとんどいない。
そして、何より、女将自身、もうずっとセックスをしていない。
セックスが大好きなのに、もう3年ほど、誰にも身体を触れられていない。
倫理と欲望の狭間で、女将の心は揺れていた。
ひょっとして、この機会を逃すと、もう死ぬまでセックスをすることはないかもしれない。
そんなことを思ったりもする。
野田は、再度、温泉に入り、すっきりして、布団に入る。
10時50分、部屋の電気を消す。
けっこう酔いが回って、野田は眠りそうになっていた。
11時をちょっと過ぎた頃、部屋がノックされた。
『どうぞ。』
と言うと、扉が開き、ふすまが開いて、女将が入ってきた。