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らぶすとぅりぃ*出会い
【コメディ 恋愛小説】

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らぶすとぅりぃ*貝-2

「えっ、でっ、でも!あのほら…、じゅっ、授業!もう始まりますし…。」
自分一人の為に設けられた自己紹介の場なんて、転校生でもないんだから出来ればやりたくないと思い、栞は軽く抵抗してみる。
「だぁいじょうぶ!一時間目は私の授業だし、授業もそんなに遅れてないから♪」
いやいや、あたしが遅れてるんですよ先生!
心の中の栞が大きな声(かはわからないが)でツっコんだ。
「ほらっ!櫻庭さん、早く!!」
美和子のにこにことした笑顔が今は憎くてたまらない様な気もする。
栞はしぶしぶ自分の席から立ち上がり、教壇の前まで来て黒板に名前を書くため、クラスメイトにケツを向ける形で立ちチョークを握った。
…はぁ。あたし転校生でもないのに…。
と思いながら名前を書いていると、不意に美和子が小声で話しかけてきた。
「ちょっとちょっと!櫻庭さん!」
「…何ですか?」
少し不機嫌そうに返答する栞。
美和子はそんな栞の態度に気付いているのか否か、気にもせずに話を続けた。
「名前!」
「はい…?」
「間違ってるわよ!」
「はい…え?!」
いきなりの名前間違ってるわよ警告に、栞は目を見開いて驚いた。
黒板の方に向き返り、じっくりと自分の書いた名前を確かめる。
…これで合ってるよねぇ…?先生が間違ってんじゃないの?そもそも自分の名前なんて間違うはずないじゃん。
栞は美和子が気付かないように小さなため息をついた。
「…どこも間違ってなんかないじゃ…」
「なぁに言ってんの!!ほら!名字のとこもっとよぉぉく見てみて!」
ダルそうに首を傾けながら、もう一度名字を確認してみる。
…やっぱり間違ってなんか…
「気付いた?!櫻のとこ!」
え?
「『貝』がただの『目』になってるよね?!」
え!?
それを聞いて栞は更に驚き、さっきのダルそうな態度とは打って変わって、真面目な目を黒板に向けた。
確かに『貝』が『目』になっている。あれじゃあ何と言う漢字なのかさえわからない。というかあるのか?
「す、すいません…。」
栞は急いで名前を消した。
自己暗示というのは恐ろしい。絶対間違ってなんかないと思っていると、間違いなんか目に入らなくなる。
ついさっきまで偉そうにあんなこと思っていたのが恥ずかしい。
見ているこっちも恥ずかしい。
初めに書いた字とは違い、いかにも急いで書きましたというような乱雑な字で名前を綴る。
すると、クラスの一人がぼそっと呟きの声をあげた。
「…もしかして…、名前、間違えた…の?」
ピクッと肩を跳ねらせた栞は、そろりそろりとクラスメイトに顔を向け、一度こくんと頷いた。
もちろん、顔は苦笑い。
「………ぷっ!ふはははははは!」
一人が、グーにした手を口許にあて必死に笑いを堪えていたものの、結局堪えきれずに盛大に笑い出した。
「ちょっ、悪いじゃっ、ないのっ、ふふっ…あははははは!」
その一人の爆笑をきっかけに、クラスが笑いの渦に巻き込まれた。
「自分のっ、名前間違えるなんてっ、ありえねぇ!ひゃははははは!」
「あっはははは!栞、まじおかしー!」
鷲見までもが爆笑している。それも右手の人差し指はしっかりと栞をとらえながら。
当の栞は、恥ずかしい反面、皆の笑いにつられて口許が緩み始めていた。
「ふっ…、ははっヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッ!確かにおもろいわぁ!」
栞の引き笑い炸裂。とうとう本人まで笑い出してしまった。


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