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夢と現の狭間の果てに
【OL/お姉さん 官能小説】

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既視感-1


(※第二章【目醒め】の終わりから)


 「次の駅で降りるんだ。悪いようにはしない。いいね?」

 痴漢魔はそう言うと私のショーツやストッキングを履かせて離れた。
 このまま痴漢の言う通りに次の駅を降りればきっと、最後までされてしまう。それを望んでいる自分もどこかにいる。ネット喫茶でのお預けから電車での痴漢行為に私の性欲のスイッチが半ば入ってしまっているから…。
 だけど…。

 そうして逡巡している内に駅に到着した。次々と降りていく乗客達を横目に、私は結局降りることをしなかった。
 高まった性欲以上に、私には勇気が無かったのかもしれない。一時の快楽に流されて危険な冒険をするよりも、ドンキで大人の玩具を買う方が私らしいと思う。

 「いつでも連絡しなさい」

 背後から耳打ちすると、多分私に痴漢してたであろう男が私の胸ポケットに何かを差し込んでドアから降りていった。同時にまた人が沢山入り込んできていつもの鮨詰め状態となった。
 勿体ないことをしたのかな…と、少しだけ思ったけど、私はでも安心もしていた。
 どっちにしても今日の帰りはドンキに寄ることになりそうだ。


          ※


 「おはよーございまーーす!」

 いつも通り元気よく挨拶して自分のデスクへ座る。皆も一様に「おはよう」と挨拶を返してくれる。
 昨夜は結局一人で盛り上がってしまった。ドンキで新しい玩具を買って、溜まりに溜まった欲求を発散できた。本当は本物のちんちんが欲しいけど、それは彼氏でもできてからにしよう。
 ………いつできるか分かんないけど。

 「おーはよ、サクちゃん」

 少なくとも、この男は除外。

 「…おはようございます樋口先輩」
 「つれない挨拶だなぁ。皆には元気よく挨拶するのに俺にはそんな態度?」

 樋口は馴れ馴れしく近付いてきて私の肩に手を置く。私はゴミでも払うかのように肩に置かれた手を払ってパソコンの電源を入れた。

 「痛っ、ちょっとサクちゃん。俺に対してほんと冷たいんじゃない?なんで?」
 「自分の胸に聞いたらどうですか?」
 「分かった、聞いてみよう」

 払い退けた手が肩口を回って、昨日と同じようにまた私の胸を触ってきた。

 「ちょっと!言ったそばから」
 「なに?胸に聞けって言ったのサクちゃんでしょ?」
 「自分の胸にって言ったんです!」
 「あ、聞こえる聞こえる。サクちゃんのおっぱいがもっと触ってぇ〜って言ってるのが」
 「言ってません!」

 今の時代こうも露骨にセクハラする男が居るものか?いや、現実にされてるわけだけど。
 そこでまた胸元から手を突っ込んで直接乳房を揉んできた。昨日と同じ流れ。

 「ちょ、いい加減にして!」
 「あー気持ちいい。やっぱりサクちゃんの朝一の『おはようオッパイ』は格別だね。『とりあえず生』に通ずるものがある。生だけにっつって」
 「全然上手くないから!離してよ!」
 「上手くなかった?やっぱり生中出しの時に言う方が上手いかな?今夜あたりどう?別の意味で『上手い』って言わせる自信あるけど」
 「分かったから、本当にやめてっ」

 ブラの中にまで手を滑り込ませて乳首を重点的に攻められる。指先でこりこりと弄ばれる。乳輪もなぞられて不覚にも身体がびくっと強張る。

 「分かった?分かったって言ったよね?今夜オッケーってことでいいかな?」
 「違っ…そういうことじゃ……っ」

 何で?昨日ちゃんと発散したのに。こんな男の強引なセクハラなんかですぐスイッチが入る。樋口が上手いのか、自分で思う以上に私の身体が敏感なのか…。
 指先で摘まれた乳首が右へ左へ捻転される。少しだけ痛みがあるその刺激に肩がビクつく。
 もう…何なの!いつまで弄(いじく)るつもり!?

 「じゃあさ、カラオケ行こうよカラオケ。カラオケならいいっしょ?」
 「何で…あんたなんかと…」

 否定の言葉を発するとキュッと強く摘まれた。

 「あっ」

 咄嗟に口を押さえる。やばい、変な声出しちゃった。周りを確認すると皆気付いてないのかカタカタとキーボードを叩いてモニターを睨んで仕事を続けている。

 「大丈夫、聞かれてないよ。でも初めて聞いちゃったなぁ、サクちゃんのあ・え・ぎ・ご・え」

 樋口がこそっと耳元で囁く。
 私はきっと真っ赤な顔になっている。恥ずかし過ぎるというのと、何よりこんな男に艶っぽい声を聞かれたの癪に触った。

 「ちょっと強い方がいいんだ?やっぱサクちゃんってドMだね」

 なんか言い返してやりたいと思うけど、ここで下手に口を開くとまた変な声が出そうで私は堪えるように下唇を噛む。
 乳首を攻めていた手はやがて乳房の下へ回り、下から持ち上げるように揉み上げてくる。

 「ボリュームあるね。おっぱいでかい子は感度低いって言うけど、サクちゃんは好きでしょ?おっぱい攻められるの」
 「……」
 「聞こえない振り?それもいいけどもっとサクちゃんのエッチな声聞きたいなぁ」

 立ち上がって引っ叩きたい。でもそれをすると目立ってしまう。いや、でも私は何も悪いことしてるわけじゃない。この男が悪いことをしてる。だからここで目立ったところで困るのは樋口の方だ。
 それは分かってる。分かってるけど…。

 「…っ」

 空いた手で耳を擽(くすぐ)られる。私の身体が捩れる。また乳首を摘まれて反射的に口が開き、声が漏れそうになる。慌ててまた口を押さえる。
 だめ…仕事しなきゃいけないのに…こんな男にかまけてる暇なんかないのに…。

 「18時、カラオケね?良い?」
 「行きま…せん」
 「じゃあちょっと本気出しちゃお」

 静かに、そして低いトーンで囁く樋口の言葉に、何故か私はぞくりと背筋が凍った。



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