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夢と現の狭間の果てに
【OL/お姉さん 官能小説】

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既視感-2



 樋口は言うが早く、本当に、瞬きをする間も無く、ブラウスのボタンを二つ三つと外し、ジャケットの外側からブラのホックまで外した。
 どうやって!?と思う間に浮いたブラカップの隙間へ手を滑らせて直揉みを始める。
 明らかに…さっきとタッチが違う。さっきの触り方とは違い、今度は強弱の流れにメリハリが無い。強くから弱く、弱くから強くという緩急が分かりにくい。どうも説明が難しいけれど、気付いたら強い刺激を受けて、気付いたら刺激が無くなっている。要は覚醒と昏迷が交互に不定期に分かりにくい形で訪れているということ。

 ──────極めて厄介。
 何が厄介って、、、この焦らされてる感。
 別にこの男に対して特別な想いは無く、むしろ嫌いな側の人間。だけど、この触り方(テクニック)は私の身体を意地悪なくらい刺激して、強引に…強制的に欲情を駆り立て “させられる” 。

 ソフトからハードなタッチへ移ると私の眉尻は下がり口が勝手に開く。「あ」の言葉を飲み込むのも苦痛なほどの責め苦。
 気付くとそのタッチは無くなっていて、柔らかく滑らかなタッチになる。声を我慢するほどのものではないけれど、男に触られているという感覚を肌に馴染ませるような動き。触って欲しいところを敢えて避けるような、わざと疼かせるような、そんな愛撫。唇をきゅっと閉じて顔を横に背け、樋口の愛撫になど屈しないと意識を強く持つ。
 そこへまた強いタッチになったことに気付いて、身体へ与えられる快感に強く意識を持っていかれる。
 強く意識を持とうすればそれを根こそぎ奪われ、与えられる身体の快感に抗おうとすれば逆に意識を向けさせられる。
 文字通り、樋口の手の平で翻弄されているのだ。

 「ね、カラオケ…行ってくれるよね?」

 樋口は耳元で囁く。声と吐息が耳にかかる感覚も過敏に反応してしまう。

 「いく…行くからもうやめ…」
 「よし、許可もらった」

 胸元に差し込んだ手はすぐに引き抜かれ、樋口は私から距離を置いた。
 私はどっと疲れて体が重くなった。毛穴という毛穴から汗が噴き出ている。

 「約束だよ?18時ね?」

 そう言うと樋口はデスクへ戻っていく。
 私は自分の口から垂れている涎に気付き、慌ててハンカチで口を拭った。


          ※


 「私も最近してないからなぁ」

 Urth caffe店内。パンケーキを食べながら文香さんが言う。私はアボガドエッグサンドウィッチを脇に置きイチゴスムージーを一口、ストローで吸っている。

 「そんなムラムラするの?」
 「それもそうなんですけど、そういう環境がなんか仕組まれてるみたいな?」
 「どういうこと?」
 「痴漢とかセクハラとか…」

 言ってるだけで恥ずかしい。
 今日のランチは私から文香さんを誘った。ここ最近なんか性的な欲求が湧き出ている気がするというのと、そういう環境に置かれているような気もするから、それを相談しようと思ったのだ。

 「どっちもいただけない話ね。軽犯罪とコンプライアンス違反。っていうかセクハラは樋口君?」
 「…はい」
 「何されたの?」

 何されたの?
 オフィスでおっぱいを直に触られて乳首こねくり回されましたなんて言えるわけない。

 「えっと…お尻触られて…」
 「お尻ぃ?」
 「あ、でもそんな大ごとじゃなくて」
 「いや、大ごとでしょ」

 大ごとかな?お尻くらい触られても普通そこまで騒ぐか?

 「ちょっとちょっと、リカちゃん大丈夫?」
 「何がですか?」
 「セクハラ発言だけでも今は大きな騒ぎになるのよ?肩や腕とかでも問題なのにお尻触るとか確実にやばいでしょうに」

 …確かに。
 あれ?いや、そうだよね。私はいつからお尻はセーフみたいな考え方を持つようになった?お尻とか普通にアウトじゃん。おっぱいを直接触られて乳首弄られて感覚まで麻痺して正常な判断が出来なくなってるのかもしれない。

 「確かに」
 「これは問題よ。とりあえず部長に報告して樋口君には何らかの処置を」
 「いや、待って下さい。そこまでしなくていいですから」
 「どうしてよ?セクハラされてるんでしょ?そのままでいいの?」

 ん?あれ?どうしてだろ?何で私は庇ってるんだ?樋口なんか男としてどころか人間として嫌いなのに。



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