再度、ヨーロッパへ-1
出発当日、早朝に家を出て、成田空港へ向かう。
空港から、内定をもらっている会社に封書を送る。
中には、内定辞退届けを入れてある。
溝田と一緒の会社では、働けない。
これも、自分なりのケジメである。
会社には何も問題はない。
自分の撒いた種で、自分が苦しみ、会社にまで迷惑を掛けてしまった。
今のご時世、すぐに次の就職先が決まるとは思えない。
就職浪人になる可能性は大きい。
しかし、これは自分のとった行動への罰でもあると思っていた。
スカンジナビア航空は、定時に成田を出て、デンマークのコペンハーゲンに向かう。
機内では眠くなるものの、麻衣はずっと考え事をしていた。
少し考えては、涙をこぼし、また考えては、涙を流す。
それを延々繰り返す。
コペンハーゲンで飛行機を乗り換え、スウェーデンのストックホルムに到着したのは、夕方だった。
到着ロビーが、懐かしい。
ここで途方に暮れていた時に、裕哉が助けてくれた。
裕哉の真似をして、インフォメーションでバスのチケットを買う。
『Bus ticket, adult, single, please.(バスのチケット、片道で大人1枚お願いします)』
これだけで、十分、通じた。
そして、バスに乗って、ストックホルム中央駅へ向かう。
今回は、旅程を全部組み立てて、日本でホテルを予約してきた。
ストックホルムでは、裕哉と結ばれたホテルを予約した。
同じように、ホテルの前のハンバーガー屋で、晩ご飯を食べた。
部屋に戻り、シャワーを浴びる。
初めて裕哉に抱かれた時のことを、鮮明に思い出す。
思いだしながら、麻衣は、自然に手が股間に伸びてしまう。
裕哉は、麻衣のことを、“綺麗だよ”、“可愛いね”と言いながら、優しく抱いてくれた。
本当に、心から満たされるセックスだった。
今思えば、溝田とのセックスは、お互いの性欲を満たすだけのものだったように感じる。
裕哉に会えない寂しさで、完全に冷静な心を見失っていた。
翌朝、王宮へ行き、衛兵交代を見たりして、それからタクシーで港へ向かう。
裕哉と行った時は、ここからフィンランドのヘルシンキまで行き、そこからエストニアのタリン行きに乗り換えた。
麻衣は、これをショートカットして、ここから直行でエストニアのタリンに向かうフェリーを選択した。
もちろん、船室は、二等である。
いわゆる、雑魚寝部屋である。
チケットは、日本で購入しておいた。
船内は、部屋が雑魚寝部屋であること以外は、前回と同じで豪華な客船である。
船内には、いろんな施設があって、見て回るだけでも飽きない。
翌朝には、エストニアのタリンに到着する。
前回、裕哉がインフォメーションで予約したホテルも、麻衣は日本から予約しておいた。
そのホテルに向かって歩き始める。
太っちょマルガレータが懐かしい。
ホテルに到着すると、部屋が用意出来るのは12時過ぎだと言われる。
まだ、午前中なので、荷物をホテルに預かってもらい、旧市街の散策に出る。
坂道を上りきったところにある展望台。
ここで、裕哉に肩を抱かれてキスをした。
こんな美しい街並みを見ながら、最高のキスをした。
そんなことを思いだすと、麻衣は、また涙があふれ出した。
<こんな綺麗な景色とは裏腹に、私の心は、真っ黒だった>
と、思う。
ホットワインを飲もうと、カフェに入る。
もうかなり寒い時期になっているのだが、カフェの客は、テラス席で毛布を掛けて、飲んでいる。
テラス席に座ると、店員がメニューと毛布を持ってきてくれる。
寒い中、裕哉と一緒に飲んだホットワインを、ゆっくり飲み干す。
カフェを出て、ホテルに行き、チェックインを済ませ、部屋でくつろぐ。
小さなホテルで部屋数も少ない。
偶然にも、前回、裕哉と泊まった部屋と同じ部屋に案内された。
この部屋で、前回は、裕哉とセックスをして、、初めてイッた。
それまで、オナニーではイッたことはあったが、セックスでイッたのは初めてだった。
溝田とは、バイブでイカされただけで、セックスではイッてない。
やはり、裕哉とのセックスは、相性が良かったのだろう。