内定者懇親会-1
翌週、麻衣は就職が決まった会社の、“内定者懇親会”に出席した。
これは、来春の入社が決まっている者同士、親睦を深める目的で、会社が主催するものである。
出席は任意だが、ほとんどの内定者が出席する。
麻衣も、スーツを着て、指定されたレストランに向かった。
美脚の麻衣は、スーツがよく似合う。
ストッキングをはくと、更に脚が綺麗に見える。
人事部長の、堅苦しい挨拶の後、みんな、好きずきに会話を楽しむ。
早くも酔っぱらう者がいたり、賑やかな懇親会だった。
2時間ほどでお開きになり、解散になる。
麻衣が地下鉄の駅に向かって歩いていると、
『島岡さん。』
と、声を掛けられた。
声の主は、さっきの懇親会にいた、麻衣と同じ内定者の溝田公平だった。
『島岡さんも千代田線?』
『はい、そうです。』
『じゃあ、同じだ、一緒に帰ろう。』
2人は、地下鉄に乗り込む。
『僕は綾瀬までだけど、島岡さんは?』
『私は町屋です。』
『内定が出る前の最終面接で、僕、島岡さんがいたの覚えてますよ。』
『そうなんですか?』
『うん、綺麗な人がいるな、一緒に入社できるといいな、と思ってたので。』
そう言われて、麻衣は悪い気はしなかった。
麻衣は、目の前に溝田のことは、まったく覚えていない。
ただ、好青年な感じで、人の良さそうな感じがする。
『同期なんだし、もし良かったら、ラインを交換しませんか?』
と言われ、2人はラインを交換する。