痴漢-1
蛍光灯は切れかけている。不定期に点灯と消灯が繰り返される。
日が沈むと外灯の少ない公園は誰も寄り付かない。木々に囲まれた公園は薄暗く、虫の鳴き声が木霊する。
点滅を繰り返す蛍光灯の下で蠢く二つの影。
公園内の障害者用トイレは使用中となっている。
「あっ…ああっ!い、や…そんなっ…」
点灯すると映し出されるスーツの男と半裸の私。黒のジャケットは手摺りにかけられている。ブラウスはボタンを全て外され、ブラジャーはホックだけ外され、収まり先を失った大きな双丘が激しく揺さぶられている。
スカートは腰まで捲られ、引き裂かれたストッキングは地面に捨てられ、ショーツが左足首に掛かっている。
「んんっ…すごっ……あっ」
淫らな嬌声が個室に響く。
半裸の私は壁に手をつき、尻を突き出し、背後からの男の攻めに喘ぐことでしか応えることができない。
「あっあっ……はぁっ、あん!」
お預けをくらい続けた私は、いとも容易く見知らぬ男の逸物を受け入れた。出入りの摩擦が加速し、私はただ乱暴な扱いに悦ぶ。
いきり勃った肉棒は私の出す蜜液に濡れて光沢を放つ。よだれ塗れのそれは何度も何度も入口を行き交い、より分泌液の漏れを促す。
「気持ちいいだろ?」
「い…やぁ…」
「気持ちいいと認めるんだ」
男は後ろから抱きかかえると、乳房を揉みながら腰を突いた。
「ああ…だめ、だめ…それぇ……」
自分の声かと疑いたくなるほど甘えた声が口から漏れる。男に媚を売る女を嫌っていたが、私も似たようなものなのかもしれない。
未だ名も知らない男と一線を超えて、ただ男の印を体内に刻まれていく。挿入る度に私の膣内は男の形に合わせ、そして男の形を、体温を覚えさせられていく。
「…いい………気持ち…いいの…!」
電車内では声を抑えるだけで精一杯だった。でも一度喘いでしまうと、タガが外れたように声を張って喘いでしまう。
ノッてきてる。はしたないと分かっていながら、私は誰とも知らない男の攻めにまるで恋人との情交のように淫らな部分を曝け出し始めている。
「良い子だ」
褒められた…。背後から突かれながら褒められて私はどうしてか胸がきゅんとする。こんな犯罪者に褒められて嬉ぶのはおかしいのだけど、それでも私は嬉しくて気持ちが昂っていく。
首を回されて濃厚なキス。男の厚い唇が私の艶めいた唇を貪る。私も肩を上げて後ろにいる男の首に手を回す。肩を上げることで反った背中は胸を張らせる形となって、その胸はより男にとって悪戯しやすくなる。
少し痛みがあるくらいの力で胸は鷲掴みされ、指の跡が残るのではないかと思うくらい揉みしだかれる。
…玩具だ。私はもうこの男の………。
「あっあん!もっと…お願い…もっと…!」
貪欲に求める雌と化した私は自らも腰を振ってもっと “良いところ” に当たるように動く。
これは頭の中でいつも描く妄想とは違う、歴とした現実。被虐的な私が望むいつもの夢が叶った瞬間。
いつもいつもいつも、私は我慢してた。
いい大人を演じて、賢ぶって、常識人のように振る舞っていた。仕事だって真面目に取り組んで、勉強して、試験だって受けて…周りから褒められるようになりたくて………。
『リカちゃんはいつも勉強して偉いね』
『真面目にやってるな』
『流石サクちゃん、何でも知ってるね』
そんな表面上の褒め言葉を真に受けて浮かれて、私はまた頑張って…でも…。
─────良い子だ─────
隠れてる本当の自分を褒められた。自分でも隠してて自分でも分からなかった自分を褒められて、私はこの名も知らない男に……恋慕の情を持ち始めている。
チョロいのかもしれない。自分で思うよりもチョロいのだ、私は。
「い…く、イクっ」
耐えることも、我慢することももうやめた。
私は素直に自分の身体に正直になって、怒張した男の肉の突きで絶頂を迎えると、自身の全てを “彼” に委ねた………。