痴漢-3
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「さ、終わった終わったー!」
定時になり私はいそいそと帰り支度をする。
「サクちゃん最近元気だね。彼氏でもできた?」
「まさかぁ」
文香さんの問いに私は少し戯けて答えた。
「心なしか腰の辺りが充実してるように見えるわ」
「文香さんそれセクハラですよ?」
「お尻がツンと上向いてるし…なんか怪しい」
「どんな見方ですか」
私は笑って誤魔化す。文香さんは中々鋭い。
「サクちゃん本当に男ができたの!?」
樋口が何やら慌てた様子で私に詰め寄ってきた。
「何ですか急に。放っといてください」
「ほ、放っとけないよ!聞いてないよ!サクちゃんは俺と一夜を過ごす予定でしょ!」
「そんな予定は組み込まれてません」
「え?でもマジで?マジで男が…?」
「………さぁ?どうでしょ?」
敢えて私は言葉を濁す。樋口は間抜けた顔で私を見続けている。
「…待って、やばい。何その色気のある顔。絶対ヤッてるでしょ!?」
「ご想像にお任せします」
帰り支度を終えた私はバッグを持つと「じゃ、お先でーす」と歩き出した。
「うわぁあああ!俺のサクちゃんが!サクちゃんがぁあああああ!!!」
樋口の訳分からない雄叫びと「樋口くんうるさい!」という文香さんの声を背に、私は軽やかな足取りでオフィスを出た。
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あれから一ヶ月は経った。
17:34分発の川越行き。4号車の一番後ろのドアの隅が彼との “約束” の場所。
決め事は幾つかあるのだけど、その一つとして下着を身に付けないこと。
駅構内のトイレで下着を脱いでバッグへ仕舞う。ここ一ヶ月、まだ私には “飽き” が来ない。ここからの時間はいつも胸が高鳴る。
今日はどんな風に躾されるんだろう。
私はまだ彼の名前さえ知らない。私の個人情報は全て彼に知られているのに、私自身は彼の名前も住所も家族構成も何も分からない。分かるのは彼の指示が絶対ということと、彼のペニスの味と逞しさのみ。
もしかしたら私は何番目かのペットなのかもしれない。複数居る内の一匹の雌でしかないのかもしれない。
それでも…いい。彼の中で一番のペットで居られれば、それで良い。
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「んっ…ぁっ」
飼育されてからこの電車でほぼ毎日のように可愛がられている。電車内でも構わず彼は………ご主人様は私の膣内に猛った肉棒の出入りを繰り返す。公衆の面前でバレない様に交尾する。声を、息を殺してただ内壁を擦られる刺激に恍惚感を覚える。
ご主人様はゴムを付けないから私はピルを飲み続けている。いつだって生中出し。無責任な性行為で赤ちゃんの元を私に注ぎ続ける。
今日もただ電車内で私を犯して、いつもの様に中に出されて終わる………そう、思っていた。
※
奥の奥で脈動を感じる。私を孕まそうと溢れるほどの精液が注ぎ込まれる。
「…一ヶ月か…」
ご主人様が沢山の精を私に注ぎながら耳元で呟く。灼ける様に熱い肉棒が小刻みに膣内で震えながら最後の一滴まで搾り出している。
私はきっと、この人の一番の………
「さあ…卒業式だ」
「…え?」
ご主人様は言うとペニスを引き抜き、私の傍から離れる。中に吐き出された精液が膣から溢れ、太腿を伝う。
「後は好きにしろ」
後ろからご主人様の声。
何のことか分からない。何を言っているの?好きにしろってどういうこと?卒業式って何?
私は恐る恐る振り返ると、私を囲んでいる乗客の男達が皆一様にチャックを下ろして、剥き出しのペニスをしごいていた。
背筋が凍るほど不気味な笑みを浮かべながら………。
「くくく、この日を楽しみにしてたんだ」
「リカちゃん、俺達も気持ちよくしてもらうよ」
「毎日毎日見せつけやがって。やっとこの日がきたかよ」
「くっそデケェおっぱい興奮するな」
「これからは俺達が “ご主人様” だよぉ、リカちゃん」
「卒業式が終わったら、今度は入学式だよ」
にじり寄る男達。血の気が引く。一歩下がるもドアに阻まれて動けない。
全部、見られていた。今までのこと。それはでも当たり前だ。見られてもおかしくない所でそういうことをしていたのだから。
「見られながらヤるのが好きなんだろ?」
「たっぷり可愛がってあげるからねぇ」
「安心しなリカちゃん。この車輌はほぼ俺達の貸し切りだ」
飢えた狼の群れの中に放り出された羊。
ご主人様はじりじりと迫りくる男達のせいで、その姿はもう見えなくなっている。
私はあの人の一番ではなかった。
私はあの人にとっての玩具でしかなかった。
「さあ、終点まで愉しもうか」
幾本もの手と幾本もの肉棒が、一斉に私へと向かってきた。