Marionette Day Dream~Re birth-1
気にしない振りをしていても、それに対して興味が沸いてしまうのがヒトの性だ。
それは俺も該当していた。
「本当に俺のチカラは意味わかんねーよな。寝てようが常に起きてるようなもんだし。」
「まぁ仕方ないだろ。逆に考えれば面白いチカラだと思うけどな。それにきちんと寝ているんだし。」
「そうだけどさ…なんか日に日に寝覚めが悪くなっていきそうだ。」
大学の中庭で軽口を叩き合う。コイツは「峰岸
隆也」中学からの付き合いでお互いのことは良く知っている間柄だ。
ああ、俺のことはまだ説明していなかったな。
俺は「藤島 一樹」現在大学2年。専攻は『未解析学』
所謂「チカラ」の謎やらを追求するってとこだ。
因みに峰岸も同じ専攻だ。
「前々から聞いてたけど誰の夢かはまだわからねーの?」
峰岸が上着からタバコを取り出し不慣れな手つきで火をつける。確か先週から吸い始めたんだよな。
「火を付ける時は手で囲えば楽だ。それと問いに対する答えは「不明」でいいか?」
携帯灰皿を出しながら峰岸が明らかに不満そうな顔で頷く。何でそんなに不満そうなんだ。
「そっか。いやわからねーなら仕方ないな。」
「俺としても誰の夢なのか、なんでこんなに同じような夢が続くのか気になって仕方ないんだけどな。」
「もう二月になるんじゃねーの?」
「だな。普段なら夢の中で『夢の主』もすぐ特定できるし、出入りは自由だ。今回は一方的に見せられ続けてる気がする。」
そうなんだ。今回見続けている夢は干渉することに制限がある。
『会話をする』これだけしか許可されていない。
そして他人の夢と、自分の意思の接続解除も出来ない。
別段悪夢って訳でもないようなので余り苦にはならないが……それでも目を背けたくなる様な場面も多々ある。
さらに今回の夢は俺の意志とは無関係に見せられている様だ。
自由が利かない夢の世界
「……まぁいいか。藤島、俺は少し寄る所があるから先に研究室に戻っててくれ。」
吸殻を丁寧に灰皿にしまい立ち上がりながら言った。
「了解。じゃあ後でな。」
別段詮索するようなことでもなく、俺は背を向けて中庭を後にした。
「……終わるか、終わらないか。お前の御手並拝見と言いたい所だけどな…」
研究室に戻るとそこには誰も居なかった。
鍵が開けっ放しで、コーヒーの入ったカップが人数分置きっぱなしになっていた。
首を傾げつつも窓を開ける。冬がすぐそこに来ている様な乾いた風が吹き込んだ。
流石に他人の物であろうコーヒーを口にするわけにもいかず、自分の分を淹れなおした。
30分経っても誰も入ってくる気配はない。否、気配云々以前に「音」を感じないのだ。
声もなく、風の音もない、窓から見える町並みにも音を感じない。
こういうとき自分のチカラが作用したと思って間違いない。
少なくとも今まではそうだったから。