アナルヴァージン喪失 (6)-1
「あーん」
「…………」
「ほら、あーん」
「……チュ……」
「…………」
「んん……チュ……」
「ちょっとゆき!」
「ん?」
「ん?じゃなくて、あーんしてるんだけど?」
「……んふふ、しょうがないなぁ。はい、あーん」
「まったく。ぱく……もぐもぐ」
「……」
「もぐもぐ……」
「……どう?」
「酸っぱい……もぐもぐ」
「甘くしてほしい……?」
「してほしいって言ってほしそうだね」
「うん」
「じゃあ甘くしてほしい」
「しょうがないなぁ。チュウ…………どう?」
「……まだ……」
「んん……チュ、チュゥ……」
「甘くなってきた……」
「ほんと? チュ……うれしい……チュゥ……んん……」
甘すぎてとてもではないが聞いていられない会話を楽しむゆきとF。二度のアナルセックス、そして放尿飲尿プレイですっかり遅くなった昼食を、ホテルのルームサービスで済ませ、デザートのショートケーキを食べている。
尻穴を他人棒に掘られて喘ぐセクシーな妻を見るのも辛いが、素のゆきが他の男と寄り添い、文字通り甘い時間を過ごすのは精神に来る。肉体関係を持つととたんにデレデレしだすゆきの態度にも腹が立つ。
間男からすると、それまで少しつんつんしていた美人が、セックスしたら急に甘えてくるのだから男冥利に尽きるだろう。しかも人妻でありながら、ベッドの上ではドM丸出しで自らに傅き、あらゆる性的サービスを提供してくれるのだ。さぞ征服感をくすぐられるに違いない。
「昔を思い出すね」「昔を思い出すなー」
同じセリフを同時に発して笑い合う。そしてまたキス。
「付き合いはじめたきっかけもショートケーキだったよね」
そうだったのか。私の場合と同じで癪に障る。
「あの頃のゆきは、見ると勉強ばかりしてた」
「他にやることなかっただけ」
「美人のK大生が? 黙っててもいろんなお誘いがあるだろ?」
「別に……。私そういうのあんまり好きじゃなかったから」
「友達もいなかったんだっけ?」
「ぶー。そうやって人の古傷を……少しはいたもん!」
「いてて……ごめんごめん」
「まあでも……。サークルもやめちゃってたし、学校、バイト、自宅をひたすら行き来する生活だったけど……」
「バイト! 本屋の! 俺と出会った……」
「そうそう、Fくんよくあんな私に声かける気になったよね……」
「あんな私?」
「地味なメガネっ娘」
「まあ、たしかに花の女子大生って雰囲気じゃなかったけど……」
大学一年のとき付き合っていたというサークルの先輩とあまり良い別れ方をしなかったのだろうか。サークルもやめ、恋愛はもうたくさんとばかりに、地味な格好で勉強とバイトに明け暮れる大学二年の冬。人生ずっとキラキラ女子だと思っていたゆきの意外な過去。それはいったいどんな時間だったのだろう。
キス、衣擦れの音、湿ったピチャピチャ音。デザートを終えた二人は、親密な雰囲気の中ペッティングを始めた。ときどきゆきのクスクス笑いが漏れ聞こえてくる。男の気を惹こうする三十八歳の人妻が、どうしようもなく可愛らしい。早くゆきとセックスしたい。
「ねぇ、挿れて……」「挿れていい……?」
またも気持ちがピタリと一致し、笑い合う二人。そう、今ゆきとセックスできるのはFだけ。ゆきがセックスしたい男もFだけなのだ。
「どっちでする?」「どっちの穴に挿れてほしい?」
こんな言葉までシンクロさせなくても――私も早くこんな会話をゆきとしたい。アナルセックスしている男女にのみ許されるセリフを、愛する妻が発しているという事実に打ちのめされる。
「俺たち心がつながってるみたい」
「うふふ、つながってるもん……」
二人の興奮は挿れる前から最高潮に達し、ひたすら互いの唇を求め、舌をむさぼり合う。
「どうする、Fくん……?」「こっちの穴?」「んーー……」「それともこっち?」「ふふ……くすぐったいよ……」「やっぱりこっちの穴に挿れようか?」「ぁん……すごい、硬いのが当たってる……」「どうしよう、どっちの穴にも挿れたい」「ゃん……エッチ……」
あぁ、やっぱり死にたい。愛妻の女性器と肛門に、私以外の男のペニスが交互にあてがわれ、どちらに挿し込まれるのかただ指を咥えているしかない状況。
「それに『穴』って……。その言い方もすごくエッチで恥ずかしい……」
「俺も言ってて興奮してる。こんな清楚な人妻さんが両方の穴を使わせてくれるなんて……」
「うふふ……もう……。じゃあ両方の穴に順番に挿れてみる?」
ああ、ゆきまでそんな言葉遣いしないで――。
「いいの?」
「うん。あ、でも……時間的にこれが最後だよね?」
「うん」
「ゆきのお尻の穴、赤くなってない?」
「見せて……。うん、ちょっと赤い」
「そっか。旦那にバレるのが心配だな……」
「明日にはわからなくなるよ」
「今晩したいって誘われてる……」
「おやおや、仲良し夫婦さん。アナルセックスさせてあげるの?」
「ううん、お尻はFくんだけ。でも赤くしてたら旦那に怪しまれちゃう……」
「そっか。じゃあ最後は前の穴で……え? すごい……もうぐちょぐちょに濡れてる……」
「んふふ……」
娼婦のような媚びた笑みで他の男を誘う妻。
「ゆき……どこに欲しいの? 言ってごらん」
「……ぁん……おまんこ……。おまんこに……生チンポ挿れて……ぁああ! んふん……!」