アナルヴァージン喪失 (6)-2
愛する女と他の男とのセックスがまた始まった。耐えるしかない。あと少し、あと少し耐えればこの女は帰ってきて、私のものになる。それだけが心の支え。
夫を裏切りこっそりアナルセックスを済ませてきた妻をどうやっていたぶろう。夫に内緒で他人にアナルヴァージンを捧げてしまった罪悪感と背徳感で、いつもより可憐に鳴いてくれるだろうか。それとも逆に、妙によそよそしい行為になるのだろうか。心ここにあらずな女のアナルを犯すのも悪くない。義務感だけで夫に肛門を開き、初めてのふりをして恥じらってみせる妻。戸惑いつつも幸せそうな笑みをうかべて、夫との肛門性交に臨む妻――。あらゆる想像は、私を興奮させた。
*
バスルームでの小便まみれの変態肛門性交とは打って変わり、本日最後のセックスは、ゆったり愛し合う時間となった。優しく肌を重ね、下半身を結合させつつ、他愛もない会話に興じるゆきとF。
「でもあの時期、好きな本に囲まれて、こつこつ勉強に集中した時間。静かな生活も、あれはあれで楽しかったな」
「マイペースで人生楽しんでる感はあったよね」
さきほどの馴れ初め話の続きをしている。
「それに地味なメガネっ娘っていうけどさ。俺はゆきのこと、磨けば光るダイヤの原石だと思ってたよ」
「予想は当たった?」
「外れた」
「えーー?」
「磨かなくても勝手に光るダイヤだった」
「もーー!」
嬉しそうに照れて、ぺしんと叩く音。
「そもそも言うほど地味だっけ? あれは地味というよりそうだな、『ミステリアスな文学美少女』って感じ?」
「ミステリアス? 美少女?」
吹き出すゆき。
「そのころの私ってすっぴんだったし、髪もとりあえず束ねただけで、色気もなにもなかったはず……」
「まあね。ファッションもよく言えば素朴だけど垢抜けないし、重ね着で着ぶくれしてたし……」
「ふふふ。でしょう……?」
「字だけはよく見えそうなメガネかけて、本屋で黙々と働くいかにもな文系女子……」
「ほら、地味じゃん……」
「ところがね、まだあどけなさの残る横顔。ちょうど少女から大人の女性へ変わっていく、どちらでもない時期のフワフワ感、透明感……」
「あはは、なにそれ」
「普段は美少女なのに、ふとした瞬間に美人オーラがこぼれ落ちてくる。ほら、ミステリアス!」
「そうかなー」
「漫画の第一話みたいじゃない? ドキッとする主人公、みたいな」
「五話くらいで打ち切りになりそう」
妻の過去のロマンス話など、寝取られマゾにとって最高のおかずである。ときおり聞こえてくる妻の「ん……ふぅ……」という喘ぎ声がまたいい。Fに性感帯を突かれているのか、はたまた自分で尻を振って快感を求めているのか――おしゃべりしながら愉しむ大人のセックス。
「ある日、バイトが終わり店から出てきたヒロインにばったり出くわす俺。おっさんが持ってそうなパンパンに膨らんだバッグを引きずるように担ぎ、よろよろ歩いていく美少女。好奇心に負けてついていくじゃん?」
「完全に危ない人だよ。私も、Fくんも」
「ねぇ、今度はゆきが上になって……そう、あぁいやらしい腰使い」
「っぁ! ふぅ……ん……Fくんがそうやって気持ちよさそうにしてる顔、大好き……ちゅ……んん……」
「ゆきの顔も蕩けてる……あぁ、びしょびしょのマン毛がじょりじょり擦れてエロい……」
「あ、そうだ……! Fくんに聞きたかったんだけど……私って……ここの毛、濃いの……?」
「ん、マン毛のこと? 濃いけど……自覚なかったの?」
「あーん、やっぱりそうなんだ。最近旦那に言われるまで知らなかった」
「すごくエッチで素敵なマン毛だよ」
「私は嫌なんだけど。あとマン毛って連呼しないで」
「『まだ少しあどけなさの残る美少女』のパンティー脱がしたらマン毛がふさふさ、しかもびしょびしょ。男なら誰でも興奮しちゃうよ」
「もー……! 初めてのとき、私そんな風に思われてたの……!?」
「そうだよ、昔から花びらの両側までびっしり。脱がす前にたっぷり焦らしてあげると蒸れてエッチな匂いがしてくる……」
「…………ぁん! ん、んん!」
ときおり体位を変えたり、陰毛の話に脱線などしたりしつつ、本屋で働く訳あり美少女と、エリートビジネスマンの馴れ初め話は続く。
「ヒロインが向かった先は、これまたおっさんくさい昭和な純喫茶。バッグから本やノートをどさっと出して、メガネをくいっと上げて、眉間に皺をよせ勉強をはじめた」
「声かけられたときびっくりしたよー」
「邪魔するつもりはなかったんだけどさ。勉強の合間に読んでた本の趣味が俺と似てたからつい……」
「知らないおじさんがいきなり本の趣味の話してくるの、正直気持ち悪いから、他の人にしちゃだめだよ」
「あはは。あのときのゆきも取り付く島がない感じだった」
「なのにまた別の日懲りずにストーカーしてくるからメンタル強いなって呆れてた」
「そういうゆきもバイト上がりに純喫茶で勉強ってスタイルは頑なに変えなかったよね」
「ショートケーキが絶品なの。あのお店。ナンパ男のせいでお気に入りのルーティーン崩すのは癪だし、そのうち諦めてくれるかなーって」
「俺はこの娘、ひょっとして脈アリなのかと勘違いしてた」
「全然。まあ変な絡み方だけはしてこないから放っておいたっていうのが正解かな」
相変わらず差し挟まれるゆきの官能的な喘ぎ声。いかにも我慢できず漏れ出てしまったという感じで色っぽい。