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夢と現の狭間の果てに
【OL/お姉さん 官能小説】

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目醒め-3


 私を(意図せず)助けた男は大杉稔(おおすぎみのる)。私とは同期で年齢も一緒。テンションだけは群を抜いて高いが、脳まで筋肉かと思うほどアホな男だ。勿論、体も筋肉質で肌もやや黒い。
 樋口は私の後ろで舌打ちすると自席へと戻っていった。これからは特に樋口に気を付けていかないといけない。近くに寄せては絶対駄目だ。

 「大杉くん、ちょっと下品だよ」
 「大物でしたよ!佐々木係長!」
 「誰も聞いてないわよ」

 頭を抱える文香さん。悪気が無いアホだけに流石の文香さんも稔に強く出れない。
 稔は単純に単細胞…というか、よく言えばピュアなのだと思う。キャラクターとして憎めないのだ。頭を使うよりも頭で考えたものがすぐ行動に出る、口に出すという分かりやすい性格で、明朗快活さが彼の一番の売りだ。

 「ん?おい、リカ顔が赤いぞ!風邪か!?」
 「いや、ちょっと、うるさい」
 「待て待て、本当に顔が赤い!これ駄目だろ!先生ー!リカの顔が真っ赤です!」

 誰だよ先生って…と、頭の中で突っ込んで私も頭を抱える。空気を読むという事をこの男に望んでも無意味だ。

 「え?…あら本当ね。大丈夫?リカちゃん」

 大騒ぎする稔に反応して文香さんがデスクから立ち上がり私の元へ寄ってきた。

 「大丈夫じゃないでしょ!これもう茹で蛸みたいでしょ!ほら、この赤さ!チューチュータコかいなっつって!!」
 「ちょっと、うるさいよ大杉くん」
 「いえ、あの、大丈夫ですから」

 文香さんが騒ぐ稔を嗜め、私はとりあえず元気であることを伝える。顔が赤いのは具合が悪いからではないから…。

 「でも、ちょっと息も荒いんじゃない?」
 「いえ、本当に大丈夫で」
 「田口係長」

 文香さんの心配性が発揮された。私の直属の上司である田口係長が呼ばれ、田口係長はそのまま私の元へ来た。
 
 「どうしたのかな?」
 「ちょっと櫻木さんの具合が悪そうなので」
 「具合が?」

 と、田口係長は私の顔を覗き込んだ。
 私は咄嗟に目を背ける。昨日の給湯室での出来事を思い出して、顔を向けられなかった。
 この人はオフィスであの若い子と…と、余計なことを考えてしまう。

 「ふむ、確かに顔が赤いな」
 「でしょう?熱も高そうですし、どうします?」
 「あの、これは違うんです」
 「何が違うのかね?」
 「うっ…」

 何が違うと問われて答えにあぐねる。これは樋口にセクハラ行為を受けたせいです、なんて言える筈もない。

 「後の判断はお任せします田口係長」
 「ああ、分かりましたよ。佐々木係長」

 文香さんはそして自分のデスクへと向かった。残ったのは私と田口係長。デスクを挟んで正面に立っていた田口係長は、座っている私の左隣へと回ってきた。

 「違うと言われてもなあ」

 違和感…。突き刺さるような視線を上から感じる。ふと私は自分の胸元へ目を向けて、鋭い視線を感じた理由を理解した。
 さっき馬鹿先輩(樋口)があの一瞬の内に私のブラウスのボタンを二つ外していたのだ。お陰で上から覗かずともはっきりくっきりと谷間が露出して、ブラジャーまで見えている状態だ。
 ここで咄嗟に胸元を隠すようにブラウスを閉じればいいのだけど、それをする事で「何を見てるの!」と言葉で言わずに無言で示すようなものだと思い、かと言ってこのまま胸元を晒し続けるのも違うと思い…だから、つまり、私は何も出来ずにいた。
 でも、田口係長は間違いなく見てる。私は目を向けていないけど、分かる。散々男の視線を浴びてきたから、性的で好奇な目を向けられる時の感覚を体で覚えてしまっている。
 とは言っても、今そういう目線を向ける様な格好になっている私にも問題があるわけで、ただ微妙な空気が流れているのも確かだし、田口係長はまだきっと私の胸元に釘付けなのか、一言も何も言ってくれないし…。

 「あ、分かった!!」

 私が困っているところでまた大声が響いた。私の右の斜向かいに稔がまだ居たのだ。



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