B番長・田代孝二-1
「そうか、あの後木村君と結婚したのか。彼は僕と違って真面目だから君の相手にはぴったりだよ。
君を射止めて木村も幸せにしているんだろうな。」
「いえそれが亡くなったんです。息子が3歳の時飲酒の暴走ダンプにはねられて即死でした。」
「それじゃ君はもう10年以上も母子家庭を続けているんだ。寂しい時もあるだろう?」
探るような目で詩織を覗き込む。
(あの時の見事な肉体が男なしで耐えられるはずが無い。)
そんな思いで覗き込んでいたのだが詩織がそんな男の邪念に気付くはずもなく明るく答える。
「いえ、教師の仕事と子育てで寂しいと思う暇もなかったですわ。」
「僕はこの高校で暴力事件やいじめを封殺できたので学年主任にもなる事が出来たんです。
僕に任せてくれれば簡単に解決できるよ。
でもそれにはある人の協力が必要なんだ。一席設けるから君からも彼に頼んで欲しいんだ。
君の都合に合わせるから来てくれるよね。」
「ええ、息子の将来にかかわる事なんで必ず行きますが、変な相手じゃないでしょうね。」
「君はスケベなヒヒ爺やヤクザのチンピラを想像しているようだがそんなんじゃないよ。
彼はこの高校の三年生だ。そして君も知っているだろう駅前の田代総合病院の御曹司だよ。」
山本がこの田代の担任になったのは2年前だ。高校1年生だが彼はすでに18歳に達していた。
傷害事件やレイプを繰り返しずっと留年していたからだ。
担任になった当日、父親の田代院長の訪問を受けた。
「君が山本先生か。息子の孝二がこれ以上留年すると学校の決まりで卒業できなくなる。
私は孝二に病院を継がせたいのだ。幸い息子の偏差値なら欲を言わなければ入れる医大は多い。
どうしても高校の卒業資格が欲しいんだ。何とか協力して欲しい。」
と言って分厚い封筒を置いて帰った。
100万円入っていた。
田代を呼んで次留年すれば即退学だという説明をした。
高校中退のサラリーマンと総合病院の院長との違いを何度も説明した。
「君の幸せのためだ。卒業するまでおとなしくしてみないか。」
「先公はきれいごとばかり言うもんだな。誰がお前たちの思い通りになるかよ。」
「これはお前のために言っているんじゃないんだ。」100万円の封筒を取り出した。
「お前を無事卒業させれば後100万円貰えるんだ。俺のためでもあるんだよ。」
「そんなこと生徒の俺に言っていいのかよ。」
「学校で番を張れるような男には任侠と男気の心があるもんだよ。そうでなきゃ誰も付いてこないさ。
だから俺はそのお前の本質に賭けたのさ。お前がチクれば俺は退職に追い込まれる。」
「お前は他の先生とは違うな。変な先公だ。わかったよ。お前の言う通りやってやるよ。」
ピタリと傷害事件や暴力行為はなくなった。
でも相変わらず女性に対する乱暴は収まらなかった。
彼の有り余る精力がはけ口を求めてレイプへ向かわせるのだ。
幸い相手がこの高校の女子学生だから学年主任の山本の説得と巨額な示談金で何とかしてきた。
しかしこんな事を続けていればいずれは事件になってしまう。
「田代お前いい加減にしろよ。年齢的にやりたい盛りなのはよくわかるが少しは考えろ。」
「女の子を口説いても乱暴者の俺なんか誰も相手にしてくれないさ。」
「相手を女の子に限定するから駄目なんだ。若い男の子を欲しがっている人妻は意外と多いんだよ。
本当のセックスを知らないお前には年上の女が必要だと俺は思うね。
嘘だと思うなら同級生の高橋のお母さんを口説いてみろ。筆おろしをお願いしますと言って頼み込むのだ。
演技だと見抜かれちゃだめだぞ。本気で必死に頼み込んでみろ。駄目元だろう!」