女らしく【07】『温泉と湯煙と油揚げ』-9
そして…バスの中……
「オレはさぁ、確かに何処へでも好きな所に行けって言ったよ…」
「ああ…」
バスの最後尾の席、右隣りの大和が答える。
「でも…何で此所にいるんだぁ!」
左隣りの金髪ミドルヘアーに言う。
「何処へでもって言ったから、お前等についていくことにした」
はぁ?
「お前…本当に気に入ったぜ。『肉を切らせて骨を断つ』を実際にやる奴なんか見たことねぇ」
テメェのせいだろうがぁ!
あたた…
包帯でグルグル巻きの左腕が痛む。
「それに…俺は元式だぞ?どうだ、俺と契約しないか?そこのボンクラよりは役にたつぜ♪」
オレのパートナーは大和ただ一人だ!それと大和を馬鹿にするのは許さねぇ!
「つれないな…前の晩はいい雰囲気だったのに」
「ば、馬鹿!」
左隣りでくつくつと狐が笑う…
って狐じゃあ呼びにくいな…
「なあ、お前の名前は?」
その問いにしばし躊躇した後…
「…『飯綱 稲荷』…」
ぼそっと呟くように言う。
「変な名前…」
「うるせぇよ…お前は?」
…んっ?
「九条大和…」
「テメェじゃねぇ…」
オレか?
「オレは、蘆屋マコト」
「そうか。これからよろしくマコト♪大丈夫、悪さはしねぇよ。昨日は悪かったな♪」
学園の許可が降りるか知らねぇぞ?
その時、カチャリと金属音が鳴り、オレの前を刃が通過する。
「大和!?」
「馴々しく呼ぶな。それにマコトの左腕はお前のせいだからな!」
珍しく、大和がご立腹だ。
「謝っただろ?
それにお前も式なら守ってみせろよ。アレなら俺の方がかなりマシだ!」
大和と稲荷…完全に馬が合わないようだ。
頼むから、人の目の前で火花を散らすな…
「先に言っておく…俺はお前が嫌いだ!」
「奇遇だね、俺も同意見だ!」
しかし…こんな現状にも関わらず、バスは呑気に人間と鬼と狐を乗せて、走っていく。
続く…