女らしく【07】『温泉と湯煙と油揚げ』-8
昨日の夜とそっくりだが、ただ一つ違うのはこの大和は本物の大和だってこと…
告白してからしようと思ったけど…先でもいいよな………
しかし、夢の様な一時はまたしても破られた……
ガタガタッ!
「離せぇええ!!解けぇ!!」
隣りの部屋から狐の声がする。
大和の意識が隣りの部屋に向いてしまった…
…忘れてたオレも悪いけど…もう一発ぶん殴ってやろう!!
「うるせぇえ!!」
部屋には狐はおらず、代わりに切れ長の目を持ち、金髪のミドルヘアーを首下で簡単に括った男が額に札を貼り、両手両足をふん縛られてもがいていた。
一瞬…キョンシーかと思った…
「解けよ!」
へぇ〜、ヒトの姿にもなれるのか!
まあ、とりあえず……
ゴツッ!
鈍い音が頭蓋骨に響く。
「ぐおおぉ…」
悶える狐。
いい雰囲気を邪魔された恨みだ!
「解けぇ…」
尚も弱々しく反抗している。
コレって動物虐待か?
ふと脳裏に憐れみのような同情のような感情が過ぎる。
「なぁ…大和、可哀想じゃねぇか?」
「そう思うなら解け!」
「まあ弱ってるから大丈夫だろ」
宵闇の白刃がロープを細切れに変える。
「ほら、此所以外なら、好きなところに行けよ」
別に殺すつもりは無いからな。
その言葉に対して、狐は何かを懐かしむ様に言った。
「ああ…その言葉、俺を封じたアイツにそっくりだ」
何があったかは聞かないから、さっさと何処かへ行けよな。
「言われずとも…此所も飽きたし、それにもっと面白そうなところを見つけた♪」
チラッと横目でオレを見た後、そう言ってヒトの姿まま何処へ出て行った…
「マコト、起きるなって言ったのに!」
「大丈夫だって。それに依頼は済んだんだ。帰ろぜ、早くしないとバス逃すぞ?」
一日一本しか無いからな。
帰り際、旅館の人達はお礼にありがとうの言葉といろんなお土産をくれた。
繁盛するといいな。また来ようか大和と……