女らしく【07】『温泉と湯煙と油揚げ』-7
だが…この一瞬…
相手が最も近付き、尚且つ最も油断する一瞬を待っていた。
「!!」
「例え……左腕が引き裂かれようが……ぐっ…まだ…右腕が残ってるんだよ!!」
最後の霊苻を渾身の力で殴り付ける!
「がふっ!」
その一撃で相手は完全に沈黙した。
「マコト!何馬鹿なことしてるんだ!!」
炎を振り払い、大和が駆け寄って来る。
「言った…ろ……聞き…分けのない奴は……オレが…ぶん殴ってでも……聞かせるって………」
オレの意識はここで途絶えた。
「…こと…マコト……」
まどろみの中、自分の名を呼ぶ声がする。
その声は段々強く、段々はっきりと響いてくる。
ああ…コレ大和の声だ……
「マコト!!」
泣きそうな大和の声で現実に引き戻された。
「……やま…と…?」
「…良かった…丸一日寝てたんだぞ…」
結局、また大和に助けられたのか…
何とか身体を起こそうとするが、大和がそれを阻む。
「な、何すんだよ?オレはもう大丈夫だって…」
「ダメだ!いつも無理し過ぎなんだマコトは!」
何時に無く荒い口調で無理やりオレを寝かしつける。
「左腕だって、もう少しで使い物にならなくなるところだったんだぞ!」
大和…オレが馬鹿なことしたから怒ってんのか……
「俺は…そんなに頼りない式なのか?」
覗き込んだ、大和から暖かな水滴が顔に落ちる…
違うよ…大和は頼りになるオレの大切なパートナーだ……
大和の両頬を撫で、水滴を拭う。そして、その手でくいっと口の端を持ち上げる。
大和の顔に不器用な笑みが浮かぶ。
「…何言ってんだよ?ほら、そんな顔してると頼りになるのも、頼りなく見えるぞ♪」
大和は笑ってるのが一番だよ。
「マコト…ごめんな…」
何だよ?
「お前は俺が必ず守るからな」
強く固い決意。それが自分のために誓っているのだと思うと、すごくうれしい…
大和の顔が近付く…いや、オレの方から近付いていく。