女らしく【07】『温泉と湯煙と油揚げ』-6
「昨日、オレのところに来たのもお前だよな?」
狐は答えない。その目は驚きと、よく分からないが哀しみに溢れていた…
「どうなんだ!」
「…あ、ああ。気の強い女が好みなんでな♪」
その問いに意外にも若い男の声で狐は喋り出し、くつくつと口を歪めている。その言葉は何故か皮肉めいていた。
けど、反省の色なんかこれっぽっちも見せやしねぇ!
「テメェ…」
八つ裂きにして、毛皮をどっかのセレブにでも売ってやろうか!!!
「まあまあ……とにかく此所を立ち去ってくれ」
大和は提案するが、この狐は…
「そうすりゃ命は助けると?
はっ!誰がそんな取引するか!それにな…これでオレを捕らえたとでも?」
狐の口許が不敵に歪み、次の瞬間には、青白い炎がロープを焼き切っていた!
「もっと丈夫な紐持って来いよ!」
飛び上がった二尾の狐は鋭い爪を振りかざし、襲いかかる。
「ぐっ…」
あまりの早さに躱しきれず、左腕に鮮血が流れる。
「マコト!」
「大丈夫…さっさと片付けようぜ…」
とは言ったものの…
やべぇな…血ぃ流しすぎた…
しかし、相手は休む間を与えず炎と爪で襲いかかる。
完全に主導権を握られた戦い。
刃と爪がぶつかり、擦れる音が木霊する。
その間に蒼炎を避け、霊苻を打ち込む。
だが、力が上手く入らないため簡単に躱される。
そしてまた爪牙が迫り来る。
大和の刃が反撃をしているが、オレを庇いながらでは動きが鈍い。
「まずは…」
炎が吐かれ、大和とオレの間を分かつ。
「大和っ!!」
「此所にいるのは…アイツじゃないんだ…
…アイツじゃない……」
言葉の意味は分からなかったが、今の状況はよく分かる。
かなりやばい!
…大和は武器を持ってるから、手負いのオレから仕留めようってことか……
畜生…血を流しすぎたせいで身体に力が入らねぇ…
鋭い牙と爪が目前まで来ている。
けどな…オレはしぶといんだ……
牙がオレの左腕を捕らえた。
熱さにも似た激痛が走る。