父娘夫婦-7
7. 元気で長生き
昨夜から今朝までの麗子との愛の交換は、克己の想像を超えた。
混んだ地下鉄に揉まれ、刑事2課の看板の下がった自分の席についても、脳がマヒして開いた書類の焦点が合わず、指がいたずらにページをめくる。
刑事二課の班長を務める克己に幸か不幸か、事件は一段楽をして、仕事と言っても報告書の作成、未決事件の見直し調査など、緊急性の無いものだった。
目をつぶると、眩いばかりに成長した娘の裸身が瞼に浮かぶ。その娘に求められたとはいえ、妻ともしたこともない濃厚な交わりが今朝まで続き、娘の言うことに従えば、今後もこの生活が続くことになる。
新たな事件が起きることもなく、漫然と机仕事を続けるうちに一日が終わり、帰途に就いた。
地下鉄丸ノ内線を新大塚駅で降りた克己は、未だ夢心地だ。
駅を降りて家路につく克己の足取りは、新婚時を想い出した。早く家に着きたい半面、どんな顔をして麗子と顔を合わせるかと思うと、心臓がパクパクした。
「ただいま」
「お帰りなさい」
「今日は定時だったの?」
「うん、ちょうど事件が片付いた後で、署にいても仕様がないんでね」我ながら言い訳めいた。
「良かった、お夕飯の支度をしているから、お風呂に入ってちょうだい、今夜はすき焼きよ」
前掛けをして玄関に出迎えた麗子は、すっかり女房気取りだ。
克己は居間にカバンをおいて風呂場に向かった。何もかもが、前に戻った。
麗子と差し向いの夕食は、楽しく、新鮮だ。
克己好みの辛口冷酒が一本、封を切って待っていた。麗子も杯をあけた。
「麗子、ダブルベッドを買ったのか?」
「ううん、二つを寄せたのよ。あたしが仕事をするようになると、ダブルだと時間差でリズムが合わないでしょ」
一見ダブル風のベッドに、風呂上がりの麗子を迎えた。
抱き寄せる麗子の肌は程よく湿気を含んで、わずかにボディローションが匂う。横抱きにして、唇を吸った。乳房を探り、唇を寄せると股間に指を伸ばした。
麗子が、肉棒を掴んだ。今朝の営みを感じさせぬ勢いで、男根は固くなった。
「お父ちゃん、元気いいね」
「お前に負けられるか」
「あたし、子供産むからね、お父ちゃんには元気で長生きして貰わないと」
「百まで生きられる時代だ、問題ないさ、でも子供はちょっと待った方が良いぞ」
「分かってる、貞夫の子を産みたくないんでずっとピル飲んでたから、落ち着くまで続ける」
「うん、そうしろ、署の柔道の先輩が、天下りで警備保障会社の社長をやっている。護身術の指導ができて、人の管理ができる人が欲しいって言っていたから、そこで良けりゃ何とかする」
「ありがたいわ」