艶之進、唸る肉刀-7
「おう、おう、……いい魔羅じゃ。……旨い魔羅じゃ」
綾乃は本茶臼にて盛んに尻を振る。艶之進の長尺物は肉壺の中でもみくちゃにされる。交接が始まって結構早いうちに激しい動きを見せる綾乃。その顔は上気し、揺れる乳房の先で深い色合いの乳首が堅くしこっている。目を交合部へ転ずると、おさねも露出しており、感じてきていることは明白だった。
「うーん、かように具合のよい魔羅は初めてじゃぞ。……滅法界に気持ちよし!」
綾乃は尻を浮かせてしゃがむ格好になり、激しい上下動を繰り出す。
「おおーー、お、お、おっ……。いい! いいぞ! おおーーーー、いいっ!」
綾乃の顔は早くも喜悦に歪んでいる。
いっぽう、艶之進は魔羅を強く摩擦されているのに一向に射精感が募ってこなかった。いくら綾乃の膣が凜に比べてゆるいとはいえ、これだけ魔羅をわやくちゃにされていれば、甘い疼きがじんわりと込み上げてくるはずだった。これはおかしい。
『待てよ、あの葡萄酒……』艶之進は男根を綾乃に預けたまま眉をひそめた。『妙な味がしていたが、ひょっとすると感覚を麻痺させる薬が入っていたのやも……。綾乃も口にしていたが、あれは飲んだふりをしていたのかもしれぬ』
艶之進は三口飲み、さらに吸茎される時、魔羅へ直接まぶされたりもしていた。
もはや疑いようがなかった。綾乃は艶之進に「勃起はしても吐精せず」という閨房の毒を盛ったのだ。犠牲者は魔羅を空しくおっ立てたまま、淫楽の女あるじのなすがままという存在になりさがる。現に綾乃は遠慮会釈なく腰を振り立て、今、
「ああああっ、いく、いく、いくーーー!」
一度目の絶頂を果たしたではないか。そして、膣の収縮に伴う「激甘」を堪能したのち、すぐに腰の撹拌を再開して、二度目の逝きを貪ろうとする。
『初めて見たときから得体の知れない感じがしていたが、こうして、あけすけに悶える綾乃を目の当たりにすると、魔羅くらべという下卑た行事を密かに執り行うだけはあると、つくづく思ってしまう』
綾乃の身体は馬上にあるごとく揺れ、艶之進に「おぬしも腰を突き上げよ!」と命じてさらなる揺れを求めようとする。
『淫奔な女とは綾乃のような女性をいうのだな。凜も交情の時は高まると激しく喘いだが、その喘ぎには切なさがあった。しかし綾乃の喘ぎから感じられるのは露骨な淫蕩さだけだ』
艶之進は早いところ勤めを果たし、この閨房から出て行きたかった。綾乃は上品な美しい顔立ちで体つきもなよやかで魅力的だが、いかんせん性欲の発露があからさまに過ぎる。
「ああああっ、またいく、またいく、またいくーーーー!」
馬乗りになった身体をひくつかせ、二度目の昇天。艶之進は絶頂時の膣の締め付けは感じるのだが、それが射精感の材料とならないことが空しかった。このままではやはり綾乃へ快感を提供するだけの性の下僕となってしまう。そんな奴婢の身体の上で女あるじは激しく身をくねらせ、尻を打ち付ける。
「あああっ、いいっ。……凄い、凄い、凄いーーーーー!!」
綾乃の全身が痙攣する。早くも三度目の悦境往訪。それでも彼女は満足せず、すぐにまた陰唇をこすりつけ、杭打ちを仕掛けてくる。その淫乱ぶりを、絵師は黙々と絵筆を操り記録してゆく。下僕が綾乃から解放されるまで、はたしてその絵が何枚描かれるものか……。艶之進は暗澹たる気持ちになった。
が、ふと思った。
『考えてみれば、綾乃に盛られた麻痺酒の薬効がいつまでも続くとは限らない。酔いが醒めるのと同じように魔羅の麻痺もやがて治まってくるはずだ。それを早めるためには身体を激しく動かして血の巡りを良くすることだ。ふむ、それにしかず』
艶之進は上半身を起こし、綾乃の両肩に手を当て、押し倒した。そして、本茶臼から本手(正常位)へと体勢を変え、腰の打ち付けを開始した。
「おうおう、床師の面目を果たそうてか。よいぞ、思い切り打ち付けよ。貫通するほどに打ち付けよ!」
組み敷かれた綾乃が下からきつく抱きしめてくる。艶之進は大腰小腰という技など繰り出さず、初手から激しい突き入れ。
「んあああっ、いいっ。それいいっ。もっとしてたもれ。もっと、もっとーーー!」
綾乃が乱れる。長魔羅に膣奥を連打され淫水をどくどくと吐き出す。そして、四度目の法悦境。もはや上品な目鼻立ちは悦びに崩れ、赤く火照っている。膣口の周囲も充血して大ぶりな赤貝と化している。そして色素の沈着した陰唇は愉絶にうねり、七輪の上で網焼きされる鮑(あわび)の悶絶さながらだった。
その鮑のくねりの中心を艶之進の剛直が猛打する。愛液の飛沫が上がる。
「もうだめ、もうだめ、もうだめ、もうだめ、もうだめ、もうだめ……」
綾乃の眼が虚ろに泳ぎ、
「いく、いく、いく、いく、いく、いく、いくいくいくいくいくいくいく…………」
男の背中に綾乃の爪が食い込み、
「いぐっっっ!!!!!!」
艶之進を乗せたまま上半身が弓なりになり、そのまま硬直。総身の痙攣。……やがて弛緩。
綾乃は呆けた顔で艶之進の下敷きになっている。焦点の合わない目には何も映っていないようだった。
『ふむ……、逝き果てたか……。これで綾乃も満足したかのう?』
射精には至らずとも勤めは果たしたかと思ったその時、綾乃の瞳に精気が戻った。そして瞬時に妖しい色が浮かび、口角が凄艶に上がった。
「ああ……愉悦、愉悦。これでこそ江戸一番の床師。極旨のまぐわいじゃ。さあ、今度は後ろ取りで攻めてたもれ!」
身体をくねらせ四つん這いになり、双臀を突き出す。女陰はトロトロに熟し切り、発酵臭が漂ってきそうだった。気の弱い男であれば、ここで戦意喪失して萎(な)えるところだろうが、艶之進は生来の腎張り(精力旺盛)に加えて麻痺酒のせいもあり、依然として勃起したままだった。