『THE ENDLESS』外伝〜光羽編第三章-1
このゲームは今大変な事になっている。何故かって?説明すると長くなるが……
まず賞金首の奴等が、自衛の為に徒党を組むようになった。人数が増えると自然と強くなる。強くなると人数が増える。そんな訳で盗賊団は強くなり、ギルドを潰して財産を全て奪う事も可能となった。
こうなると中央局は役に立たない。そこで賞金稼ぎ達も集結して自警団の様なものを創った。それも最初の内は押され気味だったが、如何せん分かり易い正義の集団だ。すぐに人員が集まり、二つの勢力の間に均衡が生まれた。
そして盗賊団は団結力の上昇を狙い全員同じ赤いピアスを着け(初期装備品として簡単に手に入る)、それに倣い自警団は中央局が作った特別な銀のピアスを着けた。こうなるともう官軍と賊軍の戦いだ。
そう言う俺もその官軍の一人として戦っている訳だが。
今ではギルドシティは官軍を中央局を含む西、賊軍を東として分裂してしまった。(勿論中央局は破壊不可能)俺達はもともと西側に居たので助かった。
今日もまた中央局の指令を受け、俺は戦う。
「マスター、指令が来ました」
「今日は何だ?蓬莱」
全メンバー六人が集まる。
「『賊の支配下にあるD-56を制圧せよ』か…」
やはりスパイもいる様でこういう攻撃の情報は大体筒抜けなのだが、素早く行動すれば問題は無い。
「皆急いで出発だ。D-56は平地エリアらしい。皆生き残るぞ!」
平地は混戦になり易い。今回も誰もゲームオーバーにならなければ良いが…
賊軍がぎりぎり目視できる距離に来ても、予測通りまだ味方は集まりきっていなかった。
「シエル、お前は一番戦闘力が低い。前線には出ず、他のプレイヤーの補助を心掛けろ」
「はいはい、もう何度も聞きました」
「鋭刃は…最初に覚醒して斬り込み、敵の士気を下げろ。引き際の回復は俺が請け負う」
「分かりました」
「ミリアは敵の増援が来ないか見張り、来た場合は得意の遠距離攻撃魔法で足止めをしろ」
「了解」
「蓬莱は俺が合図するまで動くな」
「異存なし」
そして颯葉。
「颯葉は……最初から前線に突っ込め。但しあまり俺から離れるな」
「分かっているさ」
本音を言うと、俺は颯葉を危険な目に合わせたくはない。しかしマスターとして颯葉の力は最大限に活用しなければならないし、もし安全な所に置こうとしても、颯葉自身が許さないだろう。
「攻撃開始いぃぃぃぃ!!!!!!!!」
戦いの始まりを告げる大音声が、その場のある種の昂揚を呼ぶ空気を吹き飛ばし、また違う昂揚を生み出した。
「「「「「ワアァァァァァ!!!!」」」」」
本隊第一次突撃隊を含む者達の声が大空を裂く。