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アイドリング2ndシーズン
【フェチ/マニア 官能小説】

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アイドリング2ndシーズン-10

チャプター10



「店長、すみません。バイトを休んで申し訳ありません。ごめんなさい……」

 スマートフォンに向かって平謝りしながら友里は泣きべそをかいた。朝起きたら何だか体がだるいので体温を計ってみたところ、三十八度の熱があった。

「仕事の疲れが出たんだと思うよ。いくら若いと言ってもいずれはお母さんになる体なんだし、無理は禁物だからね」

「わかりました。でも、体調が快復したら休んだ分はかならず取り返します」

「じゃあその時は、僕も友里ちゃんをレンタルさせてもらうから。なんてね」

「もちろんです。白衣の天使でも、生徒を誘惑する女教師でも、集団痴漢される女子高生でも、寝取られる人妻でも、それから肉体の契約を結んだ可哀想なアルバイトの女の子でも、どんな役でも引き受けます」

 熱に浮かされた声で友里が言うと、電話の向こうで「うほっ?」と漏らす店長の声が聞こえた。相変わらす面白いおじさんだなあ、と思いつつ友里はしばらく休む旨を伝えて電話を切った。

「はあ、参っちゃったなあ……」

 アパートの一室に敷いた布団の上に寝転がり、友里は気怠いため息をついた。確かにエッチのやりすぎは体に毒だとは思うが、需要がある限りは今の仕事を続けていこうと覚悟を決めていた。

 仰向けになり、ひたいに手をかざす。見ると手の甲に何か書いてある。自分の手をメモ代わりにする癖が友里にはあった。消えかかってはいるが、何とか字が読める。

『アダノレトコーナー 夜九日寺から』

 そういえば勤務中に書いた記憶がある。アダルトコーナーに夜の九時から閉店まで詰めていてくれ、と店長から言われていたのだ。

 そこでちょっとしたセクハラごっこや露出サービスを提供するのが、友里に課せられたノルマでもあった。

 でもこんなこと、いつまでも続けていられるわけがない。男性客からすれば、少しでも若い女の子のほうがいいに決まっている。

 一歳でも、一カ月でも、一日でも、一時間でも、一秒でも若くて可愛い女の子のほうに興味をそそられるに決まっている。

 そんなことを考えているうちに友里はいつの間にか眠っていた。どうやら朝に飲んだ解熱剤が効いたらしい。

 目を覚ました時、玄関のほうから物音が聞こえたような気がした。時計を見ると午後の二時を過ぎている。心配した誰かがお見舞いに来たのかもしれない。

 うんと布団から起き上がり、ピントの合わない視界に眉をひそめる。まだ少し熱があるようだ。

 パジャマ姿のままおそるおそる玄関のドアに近づき、「どちらさまですか?」とたずねたが、返事はない。

 鍵を外し、ドアを開ける。久しぶりに浴びる太陽の光に栄養を分けてもらった気分になっていると、外側のドアノブに紙袋がぶら提げてあるのに友里は気づいた。

 さすがにちょっぴり警戒した。見れば見るほど怪しい紙袋だ。びくびくしながら人差し指で突っついてみても、中身を知る有力な情報はまったく得られず、ふりだしに戻る。

 ドアノブから紙袋を下ろし、上から中身をのぞいてみることにした。

 入っていたのは差し入れのスムージーとサンドイッチだった。ライ麦パンに挟まれたハムとチーズとトマトがSNS映えしそうで可愛い。

 でも一体誰がたずねて来たのだろう。室内に戻って食事を摂りながら友人知人の顔を思い浮かべていたが、いつしかそれにも飽きてきて、空腹が満たされた友里は知らず知らずのうちに寝息を立てていた。


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