ダブルライフの始まり-1
「ママー!!」大きな声で言いながら私の方にススムは走ってきて腰に抱きついてきた。
「お待たせ〜、さぁ帰りましょうね〜。今日もありがとうございました」
私は、抱きつき腰にしがみつくススムをそのままに保育園の先生に挨拶して家路、ススムと私、そして須藤の3人で住む家路、についた。
私が須藤のお店のドラッグストアで働き出してから2年、私は様々な変化を迎えた。
社会人になった娘と大学生になった息子は共に東京で一人暮らしを始め、夫は海外に単身赴任することに。
ドラッグストアの仕事はパートから正社員に。
そしてそんな私は自宅は残しつつも、須藤が借りた1LDKのマンションで寝食の大半を須藤と一緒に過ごすようになった。
須藤と一緒に暮らし始めて1年が過ぎた頃、須藤は3歳の男の子ススムを連れてきた。
ススムの生い立ちは知らないし、須藤の家族についても知らないけど、須藤の子供にしては歳が合わない。
でも私は詮索せずススムを受け入れ、我が子のように育てると、ススムも私によく懐き、私をママ、須藤をお父さんと呼ぶようになった。
考えて悩むより、流れるままになる方が楽と思い、私はその流れに任せているといつの間にか44歳になってママと呼ばれる、こんなダブルライフの中にいた。