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乱れ柳
【熟女/人妻 官能小説】

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乱れ柳-2

 澪は37歳。一回り年上の夫は今、単身赴任で遠隔地におり、年に数度しか顔を合わせることがなかった。

   火照る夜も身を持て余す熟れざかり

 澪はひそかにため息を漏らす。夫との性交渉はここのところほとんどない。小学四年生の一人娘は手のかかる時期を過ぎており、澪は仕事と家事のあと、自由に出来る時間を夜には獲得していた。時折、溜まった肉欲をオナニーで処理する(娘に気づかれぬよう内密に)が、快感の頂点に達した後は満足するものの、どこか空しさが漂うのだった。
 自慰は数週間に一度ほどで、ほとんどの夜は、学生時代に趣味だった川柳をまたやってみている。市内の川柳結社へ月に数度顔を出しているが、川柳作家を本格的に目指すというものではなく、心に浮かぶことを気ままに句にしてみているだけだった。ネット句会に投稿することもあり、反応をもらう時はうれしいが、そんなことは滅多にあるわけでもなかった。
 今夜は川柳で頭を使うより身体を動かそうと、自己流のヨガをやってみる。片足前屈のポーズを行いながら自分の身体を確認してみる。
 37歳のボディは、いささかのたるみは出てきたものの、大幅に崩れてきているわけではない。160センチの身長、バストは大きめで、ウエストはまだくびれがあり、ヒップは肉感的。そんな身体を夫以外の男性、黒井に提供するのである……。
 猫のポーズをとっていて、不意に幻の異性を臀部に感じた。居るはずもない黒井が澪の尻を両手でつかみ、勃起したペニスを押し当ててくる……。
 慌てて彼女はポージングを崩し、上気した顔で壁の日めくりカレンダーに目をやった。

「黒井と会うのは二日後の7月5日。日曜日……」

 その日、娘は学校の友達と朝から遊びにゆくと言っており、澪が黒井から指定された午前10時というやけに早い時間でも、家をあけることに不具合はなかった。

   不倫するその日にかぎり大安日

 不貞をはたらく日が吉日とは、じつに皮肉なものだが、澪は日曜日の前夜、風呂に入る時、入浴剤をいつもと違う香り豊かなものに変えた。身体も丹念に洗った。そんなことをする自分に眉をひそめるもう一人の自分を感じながら、彼女は股間を特に念入りに洗い、除毛も少し行った……。


 当日、初夏にしては日射しが強く、澪は大きな黒いツバのサンバイザーにマスクで顔を隠し、目立たぬ色合いのワンピースで黒井の家に向かった。彼の話では、自分は妻に先立たれた五十路のやもめであり、子供は既に独立して他県で暮らしているとのことだった。
 黒井の家に到着し、インターフォンを押すと、ややあって不倫相手がドアを開けた。

「……いらっしゃい」

 いつものクールな顔のまま黒井が澪を招き入れる。性の獲物を捕獲したのだ。彼の口元にほくそ笑みでも浮かぶかと思ったが、そんなことはなかった。
 冷房が控えめにかけられた居間は、男やもめにしては整理されていた。ソファーに腰掛けるよう促され、

「柳川さん、お酒はいけるくちですか?」

 昼日中に突拍子もないことを聞かれ、飲めない体質だと答えると、

「ビールでもと思ったのですが、では、コーヒーをいれましょう。それならよろしいですね?」

 うなずくと、サイフォンとアルコールランプを準備し始めた。本格的だ。大学教授には物事に凝る人物が多いと聞くが、黒井もその種の人間のようだった。
 向こうのキッチンに目を転じると、カップラーメンのたぐいなど見あたらず、それどころか、使い込まれた鍋があり、多種多様な香辛料の瓶が並んでいるのが確認できた。立派に自炊をこなしているようだった。
 ややあって出てきたコーヒーは大ぶりのマグカップになみなみと入っていた。

「これからたくさん汗をかきますからね、水分を多めに取っておいたほうがいいでしょう。さあ、お飲みください」

 汗をかく? ……心の中で首をかしげながら口にしたコーヒーは香り高く深い味わいだった。
 低いテーブルを挟んで向き合う黒井は、澪と同じマグカップを持ちながら無言でこちらを見ていた。正確には、ゆっくりと視線を動かしながら澪の身体を値踏みしていた。
 会話もなく、じっくりと観察される澪。これから黒井は私をベッドへ連れ込むのだと思うと、先ほどの、汗をかくという言葉の意味にようやく気づいた。発汗するほど激しいセックスをしようというのだろう。そうだ、私は性行為をするためにここに来たのだ。
 澪は飲みかけのカップをテーブルに置き、ソファーの背もたれに背中を押しつけた。今さらながら逃げようとする心理からの行動だったが、わずか数センチの逃避に過ぎなかった。
 気まずい沈黙が流れた。天気の話でもしてごまかそうと澪が口を開きかけると、黒井がふいに立ち上がり、テーブルを回って彼女の隣に腰掛けた。ひきつる澪。が、しばらくは何もしてこなかった。
 二人並ぶと、体格の差がはっきりとした。30代後半の熟れ頃で肉感的な澪に対し、五十路の黒井は痩せ細っており、座高も彼女より少し低かった。そんな彼が、じわりと片腕を澪の腰に回してきた。

   ひさびさの異性がまるで爬虫類

 澪は身体を硬くした。黒井が空いているほうの手で澪の太ももをまさぐる。無言のまま、じんわりとまさぐる。澪はきつく両脚を閉じた。
 しばらく、ももを撫で回していた黒井だったが、澪を抱き寄せてワンピース越しに二の腕にキスをしてきた。
 唇は肩に這い上がり、素肌の露出している首筋へと至る。澪の顎がわずかに上がり、こわばる。
 首をねちっこく吸われ、今度は耳をねぶられる。澪の上体は男から逃れるように傾くが、相手の唇は離れない。
 そして、黒井がさらに密着したと思ったら、いつの間にか澪の唇が奪われていた。押しのけようともがくが、貧相な体格にもかかわらず、黒井はびくともしなかった。
 唇を強く、強く吸われる。


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