乱れ柳-10
市販のジンジャーエールでないところが黒井らしかった。
口に含むと微かに甘く、飲み込むと喉にじんわり辛さを感じた。セックスで汗をかき、乾きを覚えていたが、澪はゆっくりとロンググラスを傾けた。黒井も同じようにゆったりとドリンクを賞味していた。
「そういえば……」澪がつぶやく。「さっき飲んだあのサプリ、効いたかも……。プラシーボ効果かもしれないけど……」
「効くんだと聞かされて、そうなんだと思い込むことがありますが、あのサプリは実際、感覚を鋭くしますからね。……いつも以上に感じたでしょう?」
「……ええ、とっても……」艶然と微笑んだが、ふと、今持っているグラスに目を落とす。「この飲み物にも何かサプリが?」
「いいえ。これは普通のジンジャーエールですよ。……もっとも、生姜には血行促進効果があり、ひいては催淫効果がありますけどね」
「うふふ……」
自然に笑いの出る澪を、黒井も笑みを湛えた眼差しで見ていた。そしてつぶやく。
「やはり美しいですね、澪さんは」
不意打ちを食らい、グラスを握る澪の手が少しキュッとなった。
「きちんと化粧をして髪を整えた澪さんは綺麗ですが、ベッドインして汗ばみ、髪が乱れたあなたも魅力的です。セクシーです」
「まあ、セクシーだなんて……。お世辞でもうれしいわ……」
「実際、セクシーじゃないですか」
黒井が近づき、キスをする。
「唇がセクシーだし、そのほかも、全部……」
顔を下げて乳首にも口づけする黒井。澪は嬉しさがこみ上げ、片手で愛人の頭部を掻き抱く。そう、もはや澪にとって黒井は「愛人」と呼ぶ存在になっていた。ふんだんに女の悦びを味わわせてくれる、もう離れられない男だった。
ドリンクタイムが終わると、再びのラブタイム。
今度は騎乗位でのセックスとなった。澪のわずかな手コキだけで屹立したペニスに手を添え、対面で腰を落とす。相変わらず存在感いっぱいの亀頭を膣口が呑み込む。そのまま体重をかけると、ズブズブッと肉棒がヴァギナに収まり、澪の口角が淫らに上がる。
ここで黒井が意地悪をする。動かないのだ。腰を突き上げないのだ。しかたなく女のほうが腰を振ることになる。
はじめはゆっくりと、怒張の存在を噛みしめるようにゆったりと腰を前後に揺り動かしていた澪だったが、やがて、グリグリとオマンコをこすりつけるようになり、腰の振りもテンポよくなってくる。
「ああん……、いい……。あああ……、あああ……、あああっ……」
前後に短くローリングする澪の腰。その速さが加速する。
「ああ……、いいっ……。ああん……、いいっ……、ああんっ……、いいっ……」
タヒチアンダンスまがいの素早い腰振りになると、澪の快感度数は急上昇。
「あん……、いいっ。……イク、……イク、…………イッちゃうぅーっ!!」
白い下腹部が短い周期でビクン、ビクンと波打つ。今宵何度目のエクスタシーだろう。しかし、澪はすぐに腰のグラインドを再開し、さらなるアクメを貪ろうとする。
ここで、ようやく黒井も少しずつ腰をせり上げるようになると、澪はさかんに尻を振って力強い突き上げを催促する。
「もっと……、もっとよ。……もっとぉー…………」
黒井の突き上げは力の籠もったものとなるが、それでも物足りないか、澪は体勢を両膝付きからしゃがむ格好へと変え、ペニスを軸に尻を大きく上下させ始めた。
「あん……、いいっ……いいっ……いいっ……いいっ……いいっ……いいっ……」
尻が揺れ、乳房が揺れる。
「いいっ!……いいっ!……いいっ!……いいっ!……いいっ!……いいっ!」
全身の肉が弾む。弾む。
頭も振るので髪が乱れに乱れ、さながら、激しい風雨に晒される柳のよう……。
そして、
「イ……イグッ!!!!!!」
激烈に絶頂。
総身がガクガク震え、眼がグルンッと上を向き、後ろに倒れ込む。ブルンッとペニスが外れ、同時に陰門から潮が盛大に吹きこぼれる。
「………………………………………………………………………………………………」
しばらくの間、澪は気絶に近い恍惚の中にいた。
これほどのアクメ女冥利に尽きるもの
甘い混沌の中、こんな感想が生じかけたが、黒井が澪の身体を助け起こしたのでそれも中途半端になった。
そして、助け起こされたと澪が思ったのも束の間、四つん這いの格好にさせられる。
後ろから怒張が膣にめり込み、バックでの交情が始まる。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ…
いきなりの肉棒連打で、たちまち快感の渦が巻き起こり、澪の指がシーツを鷲づかみする。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ…
「ああダメッ…………、ああダメッ……、ああダメッ、……ああダメッ……」
澪がまた髪を振り乱す。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ…
「ダメッ……、イクッ、イクイクイクッ、…………イックーーーーーーーーー!!!!」
怒濤の突き入れに、澪は呆気なく足を踏み外し、絶頂の淵へと転落する。
「………………………………………………………………………………………………」
突っ伏して尻だけ高く掲げる女。練りに練られてトロトロになったオマンコには、まだエレクトを持続するペニスがキッチリと嵌まっている。そしてそのペニスは吐精を欲して、さらなるピストン運動に入る。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ…
顔をシーツに押しつけたまま澪がうめく。
「ダメッ…………、壊れる、壊れる………………ダメぇ…………」