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インモラル・セラピー
【その他 官能小説】

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インモラル・セラピー-1

 そのマッサージサロンを見つけたのはつい先日のことだ。ショッピングの帰り道に偶然通りかかった街角で、エキゾチックな趣の小さな立て看板がふとアイリの目に留まった。控えめに佇むその看板にはチューベローズの白い花が描かれており、どことなくミステリアスなオーラを漂わせていた。
 アイリは本来、マッサージやエステなどに熱心に通い詰めるタイプではない。むしろ苦手意識を持っていると言ってもよかった。決して嫌いなわけではないのだが、さして親しくもない人間に素肌を晒し、その上直接触れられるというのがどうにも落ち着かないのだ。
 普段のアイリならば気にも留めずに素通りしていただろう。なのに、どういうわけかその看板には不思議と興味を惹かれた。そして今日、アイリは思い切ってその店を訪ねてみることにしたのだった。

 木製の扉を開けると、清潔そうな白衣に身を包んだ男性が笑顔でアイリを迎え入れてくれた。
「いらっしゃいませ。初めてのお客様ですね」
「あ、はい、あの……予約はしてないんですが、大丈夫でしょうか?」
「もちろんです。はじめにシステムのご説明をしますので、どうぞこちらへ」
 男性に促され、アイリはおずおずと店内へ足を踏み入れた。

 簡単な説明を聞き、カルテのようなものに氏名や連絡先を書いて男性に返せば受け付けは終わりだ。
「ありがとうございます。メニューはどうなさいますか?」
 慣れないアイリはこういう時に何と答えればいいのかいまいちわからず、かと言ってあれこれと質問するのもなんだか気が引けてしまう。
「ええと……おすすめのメニューとか、ありますか?」
 男性は少し考える様子を見せてから言う。
「では、全身のリンパマッサージとデトックスのコースはいかがですか? リラクゼーションと美容効果が期待できます」
「じゃあ、それでお願いします」
「かしこまりました。お部屋までご案内いたします」

 アイリが通されたその部屋は、想像していたよりもずっと広々としていた。施術台は一台だけで、部屋の奥にはシャワーブースと大きなバスタブが備え付けられている。
「お客様にリラックスしていただくため、当店は完全個室で施術を行っております。アイリさんもどうぞごゆっくりおくつろぎください」
「あ、はい……」
「こちらに着替えて少々お待ちください。それと、テーブルに当店オリジナルブレンドのハーブティーをご用意してあります。デトックス効果を促しますので、施術前にぜひ」
 アイリは男性の手から小さな袋を受け取る。中身はおそらく施術用の下着だろう。
「では失礼します」
 会釈をして立ち去る後ろ姿を見送ると、アイリは袋から紙製の簡素な下着セットを取り出し広げてみる。
 紙でできたブラはベアトップの水着によく似た形だ。バストをすっぽりと覆い隠し、背中でリボン結びができるように作られている。しかし問題はショーツの方だ。それはアイリが想像していたものよりもずっと大胆な形をしていた。ギリギリでどうにか股間が隠れる程度の小さな三角形。それ以外の部分はほぼ紐としか言いようがなく、後姿は極細のTバック状態だ。
(え……こんなに小さいの……?)
 こういう時に開き直れればいいのだが、あいにくアイリはそういうタイプではない。かと言って、ここまで来て下着が恥ずかしいからやめますなどと言えるはずもない。
(気楽に気楽に、リラックス……)
 自分に言い聞かせながら着替えを済ませ、気分を落ち着かせるためハーブティーに口をつけた。それは今までに嗅いだことのない独特の香りがした。少し癖がある分、なんだか効果がありそうに感じられた。

 小さなカップが空いた頃、控えめなノックの音が鳴る。
「そろそろご準備はできましたか?」
 先ほどの男性の声だ。アイリは慌てて施術台にうつぶせになり、薄いクロスの間に滑り込む。
「は、はい、大丈夫です」
「それでは失礼します」
 てっきり同性の施術師が来るものだと思い込んでいたのに、まさか男性だとは――。予想外の事態にアイリは内心慌てふためくが、そんな自分がなんだかかっこ悪いような気がして平静を取り繕った。
「本日アイリさんの施術を担当します、榊です。よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
 顔が赤くなっているのが自分でも分かる。
(やっぱりやめておけばよかったかな……)
 うろたえるアイリに気付いているのかいないのか、榊はアイリに微笑みかけた。

*****

「まずは肩から始めましょう。エッセンシャルオイルを使ったマッサージでリンパの流れを改善していきます」
 大きな手のひらがアイリの肩を優しく包み、アロマオイルの芳香がふんわりと漂ってくる。榊は手のひら全体を使ってアイリの肩から肩甲骨、背中を丹念に揉みほぐした。
 マッサージの効果か、身体がじんわりと温かくなってきている気がする。
「どうですか? 痛くありませんか?」
「はい、大丈夫です」
 背中に続き、両腕、そしてふくらはぎが丁寧にほぐされていく。
「身体が温まってきましたね。ハーブティーの効果が出始めているようです」
「そうなんですね。そういえばなんだかポカポカしてきた感じがします……」
 榊のマッサージは力加減が程よく、アイリは思わずうっとりと目を閉じた。


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